日本共産党の梅村さえこ衆院議員は3月20日の総務委員会で、テレビ放送の地上デジタル移行後に国が実施してきた受信者対策の現状を示し、いまも移行できない世帯に対するきめ細かな対応を求めました。
梅村議員は、2011年7月のアナログ放送終了時点で、中継局の整備の遅れなどで地デジに移行できなかった世帯が約16万にのぼったと指摘。衛星を使った暫定的な視聴対策も今月末で終了することを踏まえ、「残される世帯に一刻も早い対応を」と要望しました。
また、地デジ移行で新たに難視聴となった地域で、ケーブルテレビへの加入で対応したのは約2万世帯になります。梅村議員は、「ケーブルテレビで対応しても、最低の月額料金が2500円を超える事業所があり、政府として軽減策をとるべきではないか」とのべました。
総務省の安藤友裕情報流通行政局長は、残された難視対策やケーブルテレビ負担軽減への努力を約束。高市早苗総務相は「視聴者・国民にデジタル化のメリットを享受してもらえるようにしたい」と答弁しました。
梅村議員は、今後も政府が責任を持って対策を継続するとともに「地デジ化の教訓を今後の技術革新や放送行政に生かしてほしい」と訴えました。
【「しんぶん赤旗」2015年3月21日付】
ー会議録ー
○梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。
本日の廃止法案は賛成であります。
きょうは、この臨時措置法廃止にかかわって、地デジ移行の経過と今後の教訓について質問したいと思います。
二〇一一年七月にアナログ放送が打ち切られ、デジタル放送に完全移行し、三年八カ月、東北はその後ではありましたがたちました。私たち日本共産党は、この切りかえに対し、実に約五千万世帯と言われるテレビが一斉に切りかわる放送史上例のない大事業であることを踏まえ、アナログ放送終了時期の決め方は、地デジ波のカバー率や受信機の普及率の達成状況によって決めるべきだと修正案を出して、提案してまいりました。
そこで伺いますが、総務省は地デジ移行に当たって、当初二〇一一年までにアナログ放送のエリアをデジタル波で一〇〇%カバーすると繰り返し約束、答弁なさってきました。しかし、途中で、二〇一一年七月までに間に合わない地域について、送信側、放送事業者の整備期限はこの二〇一五年三月まで延ばし、セーフティーネットとして暫定的な衛星放送対策を実施してきたわけであります。
このもとで確認させていただきます。送信側の中継局整備の経過として、アナログ停波前と停波後について、それぞれ整備が終わっていた中継局の数と、それが何割に当たるかをお答えください。
○安藤政府参考人 お答え申し上げます。
デジタル中継局につきましては、これまでに、親局を含めまして一万二千七十五局の整備をしてきたところでございます。
このうち、東北三県を除く四十四都道府県でアナログ放送が終了、停波した二〇一一年七月時点で、一万一千四百七十一局、割合にいたしますと約九五%になりますが、これが整備され、それ以降に六百四局、約五%が整備されたところでございます。
全体といたしまして、デジタル中継局の整備が完了いたしましたのは、昨年、二〇一四年の五月ということになってございます。
○梅村委員 これだけを振り返っても、そもそも当初お約束していた二〇一一年までに一〇〇%をカバーするという計画、十分準備が整わないまま実施されたことは、経過としては明らかだと思います。
そこで、次にお尋ねしますが、こうした送信側の準備、中継局整備が終わっていないもとでデジタル対策が進められない視聴者・国民は、デジタル化切りかえ当初、どれぐらい残されていたでしょうか。また、こうした人々をアナログ停波時点で残したことへの御認識を伺いたいと思います。
○安藤政府参考人 お答え申し上げます。
アナログ放送終了時点で恒久対策を必ずしも万全に講じ得なかった、いわゆるデジタル化によって生じた難視世帯、これは約二十七万世帯となっております。
これらにつきましては、要因といたしましては、デジタル中継局を置局する中で、アナログとデジタルの電波の特性の違い等に起因して難視地区が発生した。これも、できる限りアナログ放送終了までの間に解消するということで対策を講じてきました。
先ほど申し上げました二十七万世帯というのは、このアナログ放送終了前に出たそのデジタル難視の世帯も含めてトータルの数字でございまして、最終的に、平成二十四年三月に東北三県までアナログ放送を終了いたしました時点では、いわゆるデジタル難視の世帯というのは十六万世帯まで減少しております。
したがって、最終的に、アナログ放送終了後なお残った世帯というのは、二〇一二年の三月末現在で十六万世帯ということになっております。
○梅村委員 さまざまな御努力をされてきたということではありますけれども、やはり、そもそも受信者側の都合ではなく国の施策として行ってきた大事業でありますから、本来、スタート時点も含めまして、一人として新たな難視者を生んではいけなかったわけではないかと思うところです。それが、セーフティーネット対象として、今の御答弁でも十五万人を超えた方々が当初いらっしゃったということですから、やはりこれは今後の教訓としてはしっかり生かしていかなければいけないと思っております。
特に、多くの方々は、この三年八カ月にわたり、新たな中継局整備ができるまで暫定措置として、特に、地上波を衛星放送で東京のキー局を放映するなどの措置がとられるもとでは、その結果、その地域のローカル放送が視聴できない、また、地域情報が届かないなどの状況が客観的には生まれてきたかというふうに思います。もし大きな災害が起こったときに、すぐに地域の情報を得たいというときに立ちますと、やはりそういう中では大きな不安が残されてきたわけだというふうに思います。
そこで、三月末のセーフティーネット対策終了までもう本当にわずかとなっておりますけれども、残されている世帯数はあと幾つになっているかを確認させていただきたいと思います。
○安藤政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御説明させていただきましたように、東北三県でアナログ放送を終了した段階で残されておりましたいわゆる地デジの難視世帯、十六万あったわけでございますけれども、対策の進捗によりまして、本年二月末現在、残る難視世帯は百二十世帯となっておるところでございます。
○梅村委員 あと百二十世帯ということだと思いますが、お一人お一人の家庭にとっては、それが大切だと思いますので、残される一世帯まで、本当にきめ細やかにやっていただけるよう強く要望したいというふうに思います。
さて、次に、こうした残された世帯の問題と同時に、視聴者・国民の費用負担自身も、この間、非常に大きなものだったというふうに思います。
例えば、テレビアンテナの買いかえや対策にとどまらず、直接受信でも受信環境が悪いために、高性能アンテナなどの整備や、特にケーブルテレビに移行するしかなかった方々もたくさんおられます。共聴施設、辺地共聴施設、集合住宅共聴施設、ビル陰などの電波障害の共聴施設の方々は、関係者の調整、費用負担の両方の御苦労も大変大きなものがあったというふうに聞いております。
例えば、長野県の南牧村などでは、村として、地デジへの移行で各家庭がテレビを買いかえなくていいようにとの対策を打ったような市町村もあったというふうに聞いておりますし、とりわけ視覚障害者の皆さんにしてみますと、テレビの情報をラジオから聞けなくなるということで、大きな声が上がるもとで、この地デジに対応するラジオの製品化だとか、またその費用が、一万円、二万円、三万円ぐらいかかる製品もありましたので、この費用の軽減などを求め、北海道を初め、各地で進められてきたというふうに認識しております。
私たち共産党は、こうした低所得者の支援や受信者側、国民の対策費用の軽減策などを求めてまいりましたが、地デジ移行に伴って生まれた新たな難視となった世帯の皆さんに至っては、買いかえにとどまらない、さまざまな新たな受信対策が求められてまいりました。
そこで、次の質問ですけれども、新たな難視の中で、ケーブルテレビ加入などの対策に移った世帯数を伺いたいというふうに思います。月々の料金が発生しております。費用負担は大変大きなものがあるかと思います。最低月額料金が二千五百円を超える事業者はどのようになっており、またこの間、どのような軽減対策などが行われてきたかを伺いたいと思います。
○安藤政府参考人 お答え申し上げます。
アナログからデジタルへの移行に伴い発生しました、いわゆる新たな難視地区への対策としてケーブルテレビ、または既設共聴加入も含めますけれども、こういった対策を行っていただいた世帯は約二万世帯でございまして、今後、残る、今百二十世帯と言っておりますが、うち二十世帯が同様のケーブルテレビ加入による対策という形になってございます。
こうした中で、今委員おっしゃられましたような、月額にして二千五百円以上の視聴料を払わなければならないようなケーブルテレビ事業者への加入というものは、この残る二十世帯のところについては現在ない状況になってございます。
私どもといたしましては、ケーブルテレビでの地デジ視聴の料金につきましては、従前より、ケーブルテレビ事業者や業界団体に対して、可能な限り安い料金で提供していただけるように繰り返し要請をさせていただいてきたところでございまして、引き続き、今後も、視聴者にとって利用しやすい料金やサービスメニューについて要請してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○梅村委員 そのような努力を引き続きお願いしたいと思いますが、総務大臣、この間の国民の皆さんへの影響や今後の対策などを、この点で伺いたいと思います。
○高市国務大臣 まず、地デジの対応につきましては、平成十五年十二月にデジタル放送を開始して、平成二十四年三月までにアナログ放送を停波し、ことしの三月にデジタルの電波特性に起因する難視の対策を完了させるというところまでの本当に大事業でございました。
これだけの事業を大きな混乱なく進めてこられたのは、やはり国民・視聴者の皆様の御理解と御協力のおかげだと深く感謝をいたしております。
この間、国民・視聴者の皆様には、委員から御指摘があったとおり、地デジ対応受信機への買いかえなど、そういう御負担もいただきました。
ただ、国といたしましても、エコポイントによる受信機普及の促進ですとか、総務省のテレビ受信者支援センター、デジサポというのがあるんですが、ここで受信者の皆様への丁寧な説明、相談の対応、それから特に、例えばNHK受信料の全額免除世帯や市町村民税非課税世帯などに対して簡易チューナーの無償給付を行うなど、支援を行ってきたところでございます。
今後、やはり地上デジタル放送への移行によって放送サービスの高度化、それから周波数の有効利用が実現されたことですので、このデジタル化のメリットを十分に国民の皆様に享受していただけるように、質の高いコンテンツが提供されることを期待しております。
また、デジタルテレビというのは、地デジのシステムというのは災害対策上大変すぐれたものでございますから、これらを海外に向けても展開し、日本国内でももっともっと災害のときに身を守るために活用していただける、そういうサービスの提供を期待いたしております。
○梅村委員 この三月を過ぎても、費用負担が重くて受信を諦めた世帯もあるかと思いますし、ケーブルテレビなどの費用負担は続くわけでありますので、こうした世帯への負担軽減、さらに地デジ化にかかわる国民の苦情相談を今後も政府が継続して責任を持って受けていただきたいなというふうに思います。
そしてさらに、今後高度化を目指す動き、特にオリンピックを念頭に8K化などの推進が今図られようとしているわけですけれども、国民負担を軽減し、過剰な負担にならないようにすること、さらに、適切で必要な情報を国民に提供し、合意しながら進めることなど、今回の地デジ化の教訓を今後の技術革新また放送通信行政に生かしていくことを強く訴えて、私の質問を終わります。録ー