日本共産党の梅村さえこ議員は18日の衆院本会議で、放送局への電波停止命令に関する発言を高市早苗総務相が繰り返していることと政府統一見解について、「言論・表現の自由を定めた憲法21条と放送法を真っ向から踏みにじるものだ」と述べ、撤回を求めました。
梅村氏は、憲法に基づく放送法が第4条で定めた「政治的公平性」について、放送事業者が自ら守る規範だと指摘。一つの番組のみでも違反を「政府が判断して放送事業に介入することなど断じて許されない」と述べ、総務相の発言や、それを正当化した政府見解の撤回を迫りました。
安倍首相は、「報道や表現の自由は憲法に保障された基本的人権の一つだ」と述べる一方、政府見解については「従来を変更するものではないので、撤回する必要はない」と居直りました。
【「しんぶん赤旗」2016年2月19日付】
ー会議録ー
○梅村さえこ君 日本共産党の梅村さえこです。
私は、日本共産党を代表して、二〇一六年度地方財政計画外二法案について質問いたします。(拍手)
まず、高市総務大臣による電波停止発言についてです。
高市大臣は、一つの番組のみでも、政治的公平性に触れると政府が判断すれば、放送法第四条に違反するものとして、電波法に基づく電波停止も行い得ると繰り返し述べています。これは、憲法と放送法を真っ向から踏みにじるものです。
憲法第二十一条が保障する言論、表現の自由に基づき定められた放送法は、権力による放送への介入を防ぐことを目的としたものであり、同法第四条は、政治的公平性など、放送事業者がみずから守るべき規範とすることを定めたものです。番組内容を政府が判断して放送事業に介入することなど、断じて許されません。高市大臣の発言と、それを正当化する政府統一見解の撤回を求めます。
今、地方自治は歴史的な岐路にあります。
日本国憲法は、戦前の中央集権的な地方制度への反省から、主権在民、個人の尊厳、平和主義を花開かせるため、地方自治を重要な柱と位置づけたのであります。ところが、今、この地方自治の根幹を揺るがしているのが安倍内閣による辺野古への米軍の新基地建設ではありませんか。
戦後、基地の重圧に苦しめられてきた沖縄で辺野古に基地をつくらせないというのは、この間の選挙で示されたオール沖縄の民意であります。政府は、県民の民意を踏みにじり、地方振興策によって住民を分断し、基地建設に固執しています。これが地方自治を踏みにじるものでなくして何でしょうか。お答えください。
次に、地方の再生についてお伺いいたします。
地方の暮らしと経済は大変な状況に陥っております。これをもたらした原因は、歴代自民党政治が進めてきた農林水産行政の失敗、大企業の地方への進出と身勝手な撤退による地域経済の破綻、そして規制緩和による大規模開発と東京一極集中ではありませんか。また、市町村合併が周辺部を衰退させ、三位一体改革による地方交付税の削減が住民サービスの大幅な後退をもたらしたのではありませんか。さらに、安倍政権が実行した消費税八%増税と円安誘導による物価高が追い打ちを今かけております。
これらの、自民党政治が行ってきた地方政策についての反省と検証について、お伺いいたしたいと思います。
消費税一〇%への増税を中止し、TPPから直ちに撤退すべきです。
地方の再生のために、小規模企業振興基本法に基づく支援策の強化、最低賃金の引き上げ、住宅リフォーム助成制度への財政的な支援や行政が発注する仕事で、ワーキングプアを出さない公契約を実現すべきではないでしょうか。答弁を求めます。
地方自治体の一番の役割は、住民の福祉の増進です。住民も自治体職員もこのことを望んでいます。政府がやるべきことは、全国どの地域に住んでいても、憲法に基づく健康で文化的な生活が営めるようにナショナルミニマムを保障し、地方交付税制度の拡充を初め地方財源の確保を行うことであります。
多くの自治体が力を入れている施策が子供の医療費助成制度です。現在では、全四十七都道府県、市町村でも、中学三年生までの実施率は、通院で六五・一%、入院では実に七八・六%になります。これは、三世代をも超える長年の母たちの、そして住民たちの粘り強い声と運動によって実現したものであります。
本来、国の制度とすべきものであります。にもかかわらず、どうして国は、こうした自治体とお母さんたちの努力に水を差すような、国保の国庫負担額の減額調整、いわゆるペナルティーを科すのでしょうか。こんなことは納得できません。
総理、今この場で、この減額調整、いわゆるペナルティーはやめると御決断いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
福祉切り捨ての国の路線を地方に押しつけているのが新公立病院改革ガイドラインです。総務省は、公立病院の新設、建てかえの病院事業債の元利償還金への交付税措置を使い、再編・ネットワークへ誘導しております。これは、国の病床削減計画に合わせ、公立病院の縮小を進めるものです。これでどうして地域医療を守れるのですか。医師、看護師を確保し、公立病院を運営するための財政支援を抜本的に強めるべきです。答弁を求めます。
住民サービスを支えているのが自治体職員です。
ところが、この二十年間、地方の職員総数は連続で削減され、来年度の地方財政計画ではさらに、一般職では二千六百人減の九十六万四千人とするとされております。
この間、大規模災害が各地で相次ぎましたが、自治体職員が減らされたため、十分な情報と支援が被災者に行き届かない事例が生まれております。それでも、まだ減らそうというのですか。
自治体の住民サービスの現場ではアウトソーシングが進められ、事務職、保育士を初め、公務の職場を支えているのは非正規職員であり、その多くが女性です。住民の福祉の増進という自治体の公的役割を果たすためには、正規職員をきちんと確保し、配置することが不可欠です。総理の答弁を求めます。
ところが、総務省は、学校用務事務、学校給食、体育館や公園管理など二十三の業務でアウトソーシングを推進し、そうすれば安く済むとして、交付税の算定基準を引き下げようとしております。アウトソーシングの主要な手法である指定管理者制度については、二〇〇九年からの三年間に二千四百十五件もの取り消しなどの事例が明らかになるなど、さまざまな問題が既に指摘されているではありませんか。にもかかわらず、なぜ指定管理者制度や民間委託を交付税の算定基準とするのですか。こうしたトップランナー方式の導入はやめるべきです。
都市政策とまちづくりの問題について伺います。
政府は東京一極集中を是正すると言いますが、逆に、東京圏への人口流入はこの一年で約一万三千人もの転入増加が続いております。政府は、東京圏を国際競争のビジネス拠点等とする国家戦略特区構想を進め、リニア新幹線計画を国家プロジェクトとして推進しています。これでは、一極集中の是正どころか集中が加速するだけではありませんか。
もう一つの問題は、コンパクト・アンド・ネットワークによるまちづくりです。コンパクトと称して、公共施設の統廃合をPPP、PFIの活用と一体で進めることは、住民の共有財産である公共施設を民間のもうけに明け渡すことになりませんか。交通網の再編は、採算がとれないバス路線などの縮小につながるのではありませんか。結局、周辺部を切り捨てることになるのではありませんか。答弁を求めます。
最後に、東日本大震災の被災者への支援についてです。
東日本大震災から五年、被災者の暮らしとなりわいの再建がなければ、地域の復興はあり得ません。被災者へのきめ細やかな支援こそ求められており、そのための被災自治体に対する人的支援と財政支援をどのように図るのですか。総理の答弁を求め、以上、私の発言を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 梅村議員からは十九問御質問がございました。質問漏れのないようにお答えをさせていただきたいと思います。
放送法第四条の政治的公平の解釈に関する政府統一見解の撤回についてお尋ねがありました。
放送番組は放送事業者がみずからの責任において編集するものであり、放送事業者が自主的、自律的に放送法を遵守していただくものと理解しております。
言論の自由を初め表現の自由は、日本国憲法で保障された基本的人権の一つであるとともに民主主義を担保するものであり、それを尊重すべきことは言うまでもありません。
放送法第四条の政治的公平の解釈に関する政府統一見解は、従来の解釈を変更するものではなく、御指摘のような問題はないと考えており、撤回する必要はないと考えております。
普天間飛行場の辺野古への移設についてお尋ねがありました。
住宅や学校で囲まれ、市街地の真ん中にある普天間の固定化は絶対に避けなければなりません。これは、政府と沖縄県との共通認識であると考えています。
一日も早い全面返還を現実のものとするためには、辺野古への移設を着実に進める必要があります。
政府が行っている代執行等の手続は地方自治法に基づくものであり、著しく公益を害する違法な行為を是正するため、法治国家として万やむを得ない措置であります。
また、政府としては、辺野古移設の影響を緩和し、住民の生活の安定を図るため、地元の皆様の御要望に対してできる限りの配慮をすることは当然のことと考えています。
政府としては、沖縄の皆さんと対話を重ね、理解を得る努力を粘り強く続けながら辺野古移設を進めており、住民を分断しているとか地方自治を踏みにじるとの御指摘は全く当たりません。
地方再生についてお尋ねがありました。
農林水産業については、その再生産を確保する観点から、累次の国際交渉において、米や畜産物などの重要品目を中心に関税撤廃の例外等の措置を確保するとともに、担い手の育成、生産コストの削減などの体質強化策や経営安定対策などを講じてきました。
地方への企業誘致等を支援し、地域経済の活性化や雇用の創出に一定の成果を上げています。
規制緩和による民間都市開発の誘導は、東京以外の都市も広く対象に、海外から人材や投資を呼び込み、都市の国際競争力を強化していくものです。
平成の合併により市町村の規模が拡大したことで、行財政基盤の強化が図られ、住民サービスが向上しました。三位一体の改革については、地方の自立や地方分権の進展に資するものです。
消費税率八%への引き上げによる増収分は、地方の社会保障を含め、全額社会保障の充実、安定化に充てることとしております。
今後とも、物価が国民生活に与える影響を注視しつつ、好調な企業の収益を雇用・所得環境の改善につなげてまいります。
来年四月の消費税率一〇%への引き上げは、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するためのものです。リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施します。
TPPについては、新たに開かれるチャンスを我が国の経済再生や地方創生につなげてまいります。
地域の経済と雇用を支える中小企業、小規模事業者に対して、固定資産税などの大胆な減税や新商品開発、下請中小企業の取引条件の改善など、あらゆる施策を総動員して支援します。
最低賃金については、年率三%程度を目途として引き上げ、全国加重平均が千円となることを目指します。
賃金は労使が自主的に決定するものであり、御指摘の、公契約を制度化することについては、慎重な検討が必要です。
住宅リフォームについては、耐震改修やバリアフリー改修など、地方公共団体の助成制度に対して国が財政的に支援しています。
以上のように、これまでの自民党の施策が農林水産業の破壊や地方の衰退等を招いているとの御指摘は全く当たりません。
一方で、これまでの地域活性化策は、縦割り、全国一律、効果検証を伴わないなどの問題が指摘されていました。
このため、今般の取り組みにおいては、地方の自主性、主体性を尊重し、地方みずからが数値目標やPDCAサイクルを組み込んだ地方版総合戦略を策定しています。
政府は、自由度の高い新型交付金や企業版ふるさと納税制度などの財政面に加え、情報面、人材面で支援してまいります。
これらを初めとしたあらゆる施策を相互に連携させ、民間の力も大いに生かしながら、地方創生の動きを加速してまいります。
子供の医療費に係る国保の減額調整措置についてお尋ねがありました。
この措置については、地方団体から見直しの要望もあり、現行制度の趣旨を考慮しながら、その扱いを検討する必要があると認識しています。
このため、厚生労働省の検討会で、この措置も含め、子供の医療のあり方について幅広い観点から検討していると承知しております。
公立病院改革についてお尋ねがありました。
公立病院改革の目的は、地域における必要な医療提供体制の確保を図り、公立病院が安定した経営のもとに重要な役割を担い続けることができるようにすることです。そのため、経営の効率化や、地域の実情に応じて再編・ネットワーク化等を進めることは重要であると考えています。
新公立病院改革ガイドラインは、この目的実現のためお示ししたものであり、そのために必要な地方財政措置を適切に講じることとしています。
地方自治体における正規職員確保についてお尋ねがありました。
地方自治体における行政ニーズは、多様化、高度化しています。同時に、働く側においても、さまざまな働き方へのニーズがあるものと承知しています。
これらのニーズに応えるため、地方自治体においては引き続き、いわゆる正規職員を適切に配置するとともに、必要に応じ臨時、非常勤職員を任用するなど、それぞれの組織において最適な人員構成を実現することが重要であると考えています。
東京一極集中についてお尋ねがありました。
東京一極集中を是正するため、地方における若い世代にとって魅力ある仕事の創出、企業の本社機能移転、政府関係機関移転を進めています。
一方で、東京圏をビジネス拠点として強化し、国際的な都市間競争に打ちかっていかなければ、日本全体が貿易・投資のグローバルハブとしての機能を維持していけなくなります。これは、地方がその魅力を内外に発信するために欠かせないインフラです。
東京圏の国際競争力強化と地方創生は、相反する政策ではなく、むしろ車の両輪です。東京圏で国家戦略特区を活用してグローバル企業の開業を促し、リニア新幹線によって日本全国の時間距離を縮めることで、日本全体の国際競争力を高め、地方創生の動きを一層加速化してまいります。
まちづくりについてのお尋ねがありました。
PPPやPFIについては、公共施設の統廃合の際を含めて活用することで、民間の資金や創意工夫を活用し、地域の活性化や住民福祉の向上を図ってまいります。
コンパクトなまちづくりと連携した公共交通機関の再編については、コミュニティーバスなど多様な交通手段の導入や、都市機能の集約された拠点と居住エリアを結ぶニーズに合致した輸送サービスの提供により、地域の活力維持を図ります。
いずれも、厳しい財政状況の中で質の高い公共サービスを提供する取り組みであり、公共施設を民間のもうけのために明け渡す、地方の周辺部を切り捨てるといった御指摘は当たりません。
東日本大震災の被災自治体への人的支援と財政支援についてお尋ねがありました。
被災自治体に対する人的支援については、全国自治体からの職員派遣に係る経費を国において負担するとともに、専門性を有する公務員OB、民間実務経験者等を活用し、幅広い方面からの人材確保に取り組んできたところです。
引き続き、被災自治体の声をしっかり伺いながら、その一層の強化を図ってまいります。
また、平成二十八年度以降の復興・創生期間においても、五年間の事業規模を六・五兆円と見込み、財源をしっかりと確保し、その中で、被災自治体への十分な財政支援を講じることとしています。
被災自治体におかれては、今後とも安心して復興に進んでいただきたいと考えています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣高市早苗君登壇〕
○国務大臣(高市早苗君) 梅村さえこ議員からは、まず、私の国会答弁及び放送法第四条の政治的公平に関する政府統一見解の撤回についてお尋ねがございました。
表現の自由は、日本国憲法第二十一条で保障された基本的人権の一つであり、これを尊重するのは当然のことでございます。
これを受け、放送法第一条の目的規定では、放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって表現の自由を確保することを規定しております。
また、憲法第十二条は国民の自由及び権利の公共福祉性を、そして第十三条は個人の尊重と公共の福祉を定めており、これらも受けて、放送法はその目的として、公共の福祉に適合するよう規律することを規定しております。
放送法は、民主党政権時代の平成二十二年に改正をされたものでございますが、当時の政権におかれましても、放送法第四条は法規範性があるという考え方を示してこられたところであり、同条の違反による放送法第百七十四条や電波法第七十六条の適用については、正当な表現の自由を制限することがないよう、極めて慎重な配慮のもと運用すべきである旨の答弁がなされてまいりました。
私も、去る二月九日の衆議院予算委員会で、慎重な運用の必要性につき、同様の答弁をさせていただいたところでございます。
私の国会答弁は、過去の国会答弁を踏襲しており、撤回する必要はないと考えております。
また、放送法第四条の政治的公平の解釈に関する政府統一見解でございますが、従来の解釈を変更するものではなく、従来の解釈を補充的に説明し、より明確にしたものであり、御指摘のような問題はないと考えており、撤回する必要はないと考えております。
次に、公立病院改革についてお尋ねがございました。
新公立病院改革ガイドラインは、地域において必要な医療提供体制の確保を図り、その中で、公立病院が安定した経営のもとに重要な役割を継続的に担っていくことができるようにするため、地方自治法に定める技術的な助言としてお示ししたものでございます。
公立病院の再編・ネットワーク化は、地域全体として必要な医療サービスを提供するために重要な取り組みであることから、通常の整備の場合と比較して手厚い地方財政措置を講じることとしています。
次に、地方の定員削減についてお尋ねがございました。
各地方公共団体の定員管理につきましては、地域の実情を踏まえつつ、自主的に適正な定員管理の推進に取り組むよう助言をしているところでございます。
地方公共団体におきましては、総職員数を抑制する中におかれましても、消防、警察部門や防災に携わる職員数は増加するなど、行政需要の変化に対応しためり張りのある人員配置を行っているところでございます。
引き続き、各団体において、効率的で質の高い行政の実現に向けまして、適正な定員管理の推進に取り組むことが重要だと考えております。
最後に、トップランナー方式の導入についてお尋ねがございました。
地方財政が依然として厳しい状況にある中で、引き続き行政の効率化を進めるため、昨年八月に総務大臣通知を発出し、民間委託や指定管理者制度導入等の業務改革に努めるよう各地方公共団体に要請をいたしました。
こうした中で、地方交付税の算定におきましては、業務改革を行っている団体の経費水準を基準財政需要額の算定基礎とすることにいたしました。
今回対象とした業務におきましては、既に多くの団体が業務改革に取り組んでおられまして、それぞれの団体において、地域の実情を踏まえ、工夫をしながら適切に行っていると承知をしております。(拍手)