日本共産党の梅村さえこ議員が18日の衆院本会議で行った消費税増税再延期のための地方税法・地方交付税法改定案についての質問(要旨)は次の通りです。
8%増税で地域経済や個人消費の落ち込みを深刻にしたことが再延期の最大の理由ではありませんか。
8%増税で国民が財布のひもをギュッと締めているため、中小零細業者の売り上げが落ち込んでいます。8%増税後、消費税の新規発生滞納額は約6割も増加し、「払えない。店をたたむしかない」の悲鳴が広がっています。
年収200万円以下の給与所得者が1000万人を超え、貯蓄ゼロ世帯が全世帯の3割にのぼり、国民年金の平均受給額は月約5万4000円です。このもとで、厚生労働省の国民生活基礎調査では、8%増税後、生活が苦しいが6割にもなっています。貧困世帯への影響についての認識をうかがいます。
政府は、「偏在性の少ない、安定的な地方税財政を構築する」などとして、消費税増税と地方消費税率の引き上げをすすめてきました。消費税を増税しなければ、地方財政はたいへんになるといいますが、地方消費税率の引き上げによって地方税収が増えても、その分、地方交付税は減ることになるのではありませんか。
政府は、消費税を地方財政の軸にしようとしてきました。そして、東京都と地方の財政格差を埋めるとして、法人住民税を「地方法人税」として国税に取り上げ、地方交付税で地方に配るとしてきました。消費税増税で、自治体の財政格差を広げておきながら、これを是正するとして、地方の自主財源を取り上げるやり方は本末転倒です。
そもそも地方財政の確立は、消費税増税に頼るのではなく、内需の拡大と累進税制の強化で行うべきです。社会保障費をはじめ地方が必要とする財源を十分に確保するために、地方交付税の法定率を抜本的に引き上げることこそ求められています。地方交付税のもつ財源保障機能と財政調整機能を発揮させた地方財政への道を強く求めます。
消費税増税が学校給食や自治体病院など住民サービスや地方自治体の運営への影響について認識をうかがいます。
熊本でも東日本大震災でもやっと住宅再建というときに大きくのしかかってくるのが消費税増税です。被災者の生活と生業の再建にとって、消費税率10%への増税は大きな妨げになります。
消費税は逆進性が強く、赤ちゃんから高齢者まですべての国民にかかり、いっさい免除のない、弱い者いじめの税金です。消費税10%中止を求める国会請願署名は、1000万筆近くが提出されています。消費税10%増税は延期ではなく、きっぱりと断念すべきことをもとめます。
【「しんぶん赤旗」2016年10月20日付】
ー会議録ー
○梅村さえこ君 私は、日本共産党を代表して質問いたします。(拍手)
本法案は、消費税の一〇%増税を再延期して、二〇一九年十月からの増税実施のために、地方税等の措置を行うものです。日本共産党は、消費税一〇%増税は延期ではなく、きっぱり断念し、消費税に頼らない道をとるべきであると主張してまいりました。
まず、増税の延期について伺います。
八%増税で、地域経済や個人消費の落ち込みを一層深刻にしたことが再延期の最大の理由ではありませんか。
地域の地場産業や商店街を支えているのが中小零細業者、農家の皆さんです。八%増税で、国民が財布のひもをぎゅっと締めているため、中小零細業者の皆さんの売り上げが落ち込んでいます。八%増税後、消費税の新規発生滞納額は約六割も増加をし、払えない、店を畳むしかないの悲鳴が広がっているではありませんか。こうした実態を財務大臣はどう認識しているのでしょうか。お答えください。
また、貧困と格差の広がりの中で、貧困世帯への影響についてです。
年収二百万円以下の給与所得者が一千万人を超え、貯蓄ゼロ世帯が全世帯の三割にも上り、国民年金の平均受給額は月約五万四千円です。このもとで、厚生労働省の国民生活基礎調査では、八%増税後、生活が苦しいが六割にもなっているではありませんか。総務省の調査では、母子世帯の家計は現在でも月九百四十四円の赤字となっています。
貧困世帯への増税の影響について、厚生労働大臣の御認識を伺いたいと思います。
次に、消費税増税と地方財政について伺います。
政府は、偏在性の少ない安定的な地方税財政を構築するなどとして、消費税増税と地方消費税率の引き上げを進めてきました。消費税を増税しなければ地方財政は大変になるといいますが、自治体でいえば、地方消費税の引き上げによって地方税収がふえても、その分、地方交付税は減ることになるのではありませんか。
政府は消費税を地方財政の軸にしようとしてきました。そして、東京都と地方の財政格差を埋めるとして、法人住民税を地方法人税として国税に取り上げ、地方交付税で地方に配るとしてきました。消費税増税で自治体の財政格差を広げておきながら、これを是正するとして地方の自主財源を取り上げるやり方は本末転倒ではありませんか。
結局、消費税に頼ることがこうした矛盾を地方でもつくり、拡大する原因だと考えます。総務大臣の答弁を求めます。
そもそも地方財政の確立は、消費税増税に頼るのではなく、内需の拡大と累進税制の強化で行うべきです。社会保障費を初め地方が必要とする財源を十分に確保するために、地方交付税の法定率を抜本的に引き上げるべきです。地方交付税の持つ財源保障機能と財政調整機能を発揮させた地方財政への道を強く求めたいと思います。
さらに、消費税増税が住民サービスや地方自治体の運営にどのような影響を及ぼしているかについて伺います。
まず、学校給食の問題です。
ある自治体では、八%増税の際、保護者に対して、消費税の引き上げ率相当の給食費の値上げはやむを得ないのか、それとも給食費は据え置いて弁当持参の日を設けるのかとの選択をアンケートで迫りました。また、安い具材にするために給食メニューの変更を余儀なくされるなど、現場から悲鳴が寄せられています。
消費税増税が保護者、子供、自治体をこんなにも苦しめていることを御存じでしょうか。実態調査をすべきではありませんか。
次に、自治体病院の問題です。
消費税は、病院が医療機器や薬品、診療材料を購入する際には消費税が課税されますが、そもそも診療報酬が低く抑えられているため、いわゆる損税となって病院経営に重くのしかかっています。
全国自治体病院開設者協議会の政府への要望書では、特に自治体病院は職員数を抑制せざるを得ず、外部委託が多くなっており、損税負担が大きいと指摘をしております。
消費税の一〇%増税でさらに損税負担が重くなれば、病院経営に深刻な影響が及び、医療提供体制の維持は困難になるのではありませんか。自治体病院の役割をどう認識しておられますか。一〇%増税で自治体病院が守れるというのですか。答弁を求めたいと思います。
最後に、熊本地震や東日本大震災などからの復旧復興と消費税についてです。
熊本地震から六カ月、十七万棟を超える住家被害の約八割が一部損壊と認定され、公的支援がない事態です。被害認定の線引きが支援の切り捨てとなってはなりません。国として、一部損壊の実態を調べ、支援策を講ずるべきではありませんか。
また、住宅再建には大きな資金が必要となります。熊本でも東日本大震災でも、やっと住宅再建というときに大きくのしかかってくるのが消費税の増税です。
被災者の生活となりわいの再建にとって、消費税一〇%増税は大きな妨げになるのは明らかです。答弁を求めます。
消費税は逆進性が強く、赤ちゃんから高齢者まで全ての国民にかかり、病気になっても、失業しても、災害に遭っても免除のない、弱い者いじめの税金です。消費税一〇%中止を求める国会請願署名は、一千万筆近くも国会に提出されています。この国民の声をしっかりと受けとめるべきです。
消費税一〇%増税は、延期ではなく、きっぱりと断念すべきことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣高市早苗君登壇〕
○国務大臣(高市早苗君) 梅村議員から私には、まず、地方財政と地方消費税率の引き上げについてお尋ねがございました。
現在の地方財政は、アベノミクスの取り組みのもとに税収が回復基調にあり、財源不足額は減少傾向にございますが、平成二十八年度においてもなお五・六兆円もの巨額の財源不足が生じています。
地方の財源不足については、国と地方が折半して補填することを基本として、このうち地方負担分は特例債である臨時財政対策債の発行により対応しています。
地方財政の健全化の観点からは、臨時財政対策債のような特例債に頼らない財務体質を確立することが重要です。そのため、歳入歳出両面において最大限の努力が必要であり、歳入面においては、地方消費税収も含めて、地方税収の確保を図っていくことが必要であると考えております。
次に、消費税増税と地方法人課税の偏在是正措置についてお尋ねがありました。
地方消費税は、地域間の偏在性が少なく、税収の安定性も高いことから、社会保障制度を支える地方団体の財源としてふさわしいものであり、その税率の引き上げは必要なものと認識しております。
その一方で、地方消費税率の引き上げによる増収分は、交付団体においては地方交付税及び臨時財政対策債の減となって相殺されますが、不交付団体では財源超過額の増となり、地方団体間の財政力格差の拡大につながることとなります。
このため、消費税率一〇%段階において、地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小を図るため、法人住民税法人税割の一部を国税化し、その税収を全額、地方の固有財源である、また共有財源である地方交付税の原資とするなどの措置を講じることとしております。
この措置は、あくまで地方消費税の税率引き上げによって地方の税財源を拡大する中で行うものであり、地方消費税率の引き上げとあわせて、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築に資するものと考えております。
次に、消費税増税による学校給食への影響について、実態を調査すべきではないかとのお尋ねがございました。
学校給食に要する経費については、給食施設整備費や人件費は学校の設置者が負担し、残りの食材費を保護者が負担する仕組みであると承知しております。
この保護者負担分については、御家庭の経済状況が厳しい要保護及び準要保護の児童生徒に対して援助が実施されていると承知しています。
お尋ねの、学校給食に関する実態調査につきましては、制度を所管している文部科学省ともよく相談しながら検討すべき課題であると考えています。
最後に、自治体病院の役割及び仕入れに係る消費税負担についてお尋ねがございました。
公立病院は、民間病院の立地が困難である僻地における医療や、救急、周産期、小児、高度医療などの不採算、特殊部門に係る医療を提供する重要な役割を担っているものと認識しています。
社会保険診療については、消費税は非課税とされており、仕入れに要した消費税負担分は診療報酬改定により対応されてまいりました。
しかしながら、特に高額な設備投資を行っている医療機関にとっては負担が大きいとの御指摘があり、全国自治体病院開設者協議会からも改善を求める意見が出されていることは承知しています。
こうした御意見を踏まえ、平成二十八年度税制改正大綱においては、税制上の措置について、医療保険制度における手当てのあり方の検討等とあわせて、平成二十九年度税制改正に際し、総合的に検討し、結論を得ることとされています。
総務省としましても、公立病院を所管する立場から、こうした動きを注視しつつ、対応を検討してまいります。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) 消費税の引き上げや滞納についてのお尋ねがあっております。
安倍内閣におきまして、平成二十六年四月に消費税率を八%に引き上げましたが、三本の矢の政策等々により、有効求人倍率は二十四年ぶりに高水準となっております。また、三年連続で賃上げが行われるなど、雇用・所得対策は大きく改善をしておると考えております。
したがって、八%増税が地域経済等のいわゆる消費の落ち込みを深刻にしたことが延期の理由との御指摘は全く当たらないと考えております。
なお、消費税の新規発生滞納額が増加しているとの御指摘ですが、滞納が発生をしております要因につきましては、個々の納税者の営業や資金繰りの状況などさまざまな事情がありますので、確たることは申し上げられないと考えております。(拍手)
〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕
○国務大臣(塩崎恭久君) 梅村さえこ議員にお答えを申し上げます。
貧困世帯への増税の影響についてお尋ねを頂戴いたしました。
消費税率の引き上げによる増収分は全額、所得の低い方々への支援を含む、社会保障の充実、安定化に充てることとしており、所得の再分配にも資するものであると思います。
引き上げに際しましては、増収分を活用した社会保障の充実として、国民健康保険料等の軽減の拡充や高額療養費制度の自己負担限度額の引き下げなど、低所得者対策の強化を実施しているところでございます。(拍手)
〔国務大臣松本純君登壇〕
○国務大臣(松本純君) 一部損壊の住家被害の実態把握及びその支援策についてお尋ねがありました。
内閣府では、被害認定を迅速かつ的確に実施できるよう、被害認定基準運用指針を定めており、屋根、壁、柱などの主要な部分の被害が住家全体に占める損害割合によって判定を行うこととしております。
被害認定においては、当初一部損壊と判定された場合でも、被災者の依頼に応じ、再調査を実施しております。その結果、一部損壊と判定されても、敷地に被害があり、解体せざるを得ない場合には、被災者生活再建支援制度上、全壊と同様に最大三百万円の支援が行われます。また、独立行政法人住宅金融支援機構の災害復興住宅融資等の支援措置を活用することもできます。
なお、被害認定調査の実態については、これまでも地方自治体からの問い合わせやアンケート調査等を通じて把握に努めているところでございます。
今後とも、一部損壊と判定された方々を含め、地方公共団体向けのアンケート調査などにより、被害認定調査の運用実態をしっかりと把握してまいります。
引き続き、関係省庁や地方公共団体等と連携しながら、適切に対応してまいります。
次に、消費税増税についてお尋ねがありました。
消費税率の一〇%への引き上げは、社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するために必要なものであり、その増収分は全額、社会保障の充実、安定化に充てることとしているものと認識しております。
また、政府としては、被災者生活再建支援制度などを活用し、被災者の方々の自立した生活や住宅の再建に資する支援をしているところでございます。
いずれにいたしましても、被災地の状況、要望等を踏まえつつ、復興の着実な推進に向けて適切に配慮してまいります。(拍手)