梅村さえこ議員は3月25日、衆院総務委員会でNHK予算案に関する質疑をおこないました。籾井・NHK会長が日本軍「慰安婦」問題の報道について「8月の政府談話が出た後で」と答弁した姿勢を、「放送法から逸脱し、政府におもねるものだ」と指摘。NHK経営委員会が視聴者から意見を聞く「語る会」でも籾井会長の姿勢に厳しい声が上がっているなどの事例を示し、「参加者の声が会長に伝わるように運営を改善すべきだ」と経営委員会に求めました。
――会議録――
○梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。
日本共産党は、NHK予算に当たっては、その経営姿勢についても評価の対象と考えるものです。
そこで、籾井会長に質問いたします。
籾井会長は一月の記者会見で、ことしはNHKにとって節目の年だ、日本でラジオ放送が開始されてから九十年、国際放送は開始から八十年、NHKオンラインは開始から二十年、戦後七十年でもあると述べられながら、九十年の放送の歴史を振り返りつつ、メディアと日本の未来を見詰めることをテーマにした特集番組や、「NHKスペシャル」の大型シリーズ「戦後七十年」など、節目に関連した放送をすること、また、東日本大震災からの復興を初め、命と暮らしを守る放送に全力を挙げるとともに、判断のよりどころとなる正確な放送や、豊かで多彩な番組をお届けすると会見をされました。私も、この点は大変共感をして聞きました。
やはり、ことしはNHKにとっても放送界にとっても歴史的な節目の年であり、NHKが歴史に学び、どう公共放送として未来に向かっていくのか、大きく問われる年だと考えております。
そこで、籾井会長に伺いたいと思いますけれども、昨日の予算説明の中で籾井会長は、公共放送の原点を堅持するということを強調されました。公共放送の原点というのは、この間会長が、不偏不党、自主自律、公共料金で支えられているということを強調されているわけですけれども、こうした原点の歴史的な経過について、御認識をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。(発言する者あり)
○桝屋委員長 会場、静粛にお願いいたします。
○籾井参考人 公共放送の原点は放送法そのものである、一言で言えばそういうことであろうというふうに私は思っております。
視聴者に支えられている受信料制度のもとで、放送法の精神にのっとり、事実に基づき、公平公正、不偏不党、何人にも規律されない姿勢、つまりこれは独立性でございますが、放送を行うことで健全な民主主義の発達や文化水準の向上に貢献することが公共放送の使命であると考えております。
○梅村委員 その点は、九十年の放送の歴史からはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。(籾井参考人「済みません。もう一度お願いします」と呼ぶ)その点を、そういう教訓を、九十年の放送の歴史からどのように認識されておられるか。ことしの一月の記者会見で放送の九十年という節目を強調されたわけですけれども、戦前と戦後、公共放送の歴史というのはやはり段階があったかと思うんですけれども、今の放送法が出発した歴史的な教訓や原点について御感想をお伺いできればと思うんです。
○籾井参考人 放送というものは、まず音を出すこと、これでみんなが喜んだ時代がございます。それから、そこからニュースが流れてくる、音楽が流れてくる、歌が流れてくる、そういう中で、国民生活とともにラジオは育ってまいりました。
そうこうしているうちに、戦中は、なかなかやはり放送にとっては難しい時期があったと思います。これは、放送に限らず、新聞等々のメディアもそうだったと思います。
そういうことを経て、戦後、テレビが出てまいりました。そして、テレビも白黒からカラーに変わってきたわけでございます。
そして、今や九十年目を迎えまして、ネットとの常時同時再送信の問題とか4K、8Kの問題とか、新たな時代を迎えようとしておる。
こういうふうな歴史がございますので、我々としましては、この歴史をさらに発展させるべく、いろいろ技術的にも貢献していきたいというふうに思っております。
○梅村委員 NHKのホームページを拝見させていただきますと、NHKという事業体について、どういう形かということに対して、やはり政府から独立した公共放送事業体だということを強調されているかと思います。つまり、公権力からの自立を強調されていると思います。
私自身は、この原点というのは、戦前に放送が国民を総動員して戦争に駆り立てていった、そういう教訓から、戦後はここからの独立というものも一つのスタートラインとしてはあったのではないかなと思うんですけれども、その点は会長自身はいかがお考えでしょうか。
○籾井参考人 お答えいたします。
先ほども申しましたけれども、我々は、やはり事実を伝えるということがNHKとして一番大事なことだと思っております。それから、放送がいろいろな色彩を持って報道を行っていくということは、大変危険なことだと私は思っております。
そういう意味におきまして、やはり事実に基づいて、本当に公平公正な放送をしていく、それから不偏不党、まさしく放送法に書いてあるとおりでございます。
私は、常に職員に対してもこれをリマインドしてもらって、職員も、日ごろの番組創成について、そういう気持ちでやってもらいたいというふうに思っているわけでございます。
○梅村委員 そういう上で、きのう籾井会長の御発言で、再び慰安婦問題で発言されたかというふうに思います。
昨日も、八月の政府談話については、出ると言われておりますので、やはりその辺の談話が出た後に広くいろいろな形で意見を拾っていきたいというふうに再びおっしゃったかなと思いますけれども、そういう事実でよろしかったでしょうか。
○籾井参考人 お答えいたします。
きのうの田村議員の質問に対して、慰安婦問題の報道について、なかなか難しいというふうなことを言ったと言われておるわけでございますが、私が申し上げたのは、いわゆる慰安婦問題を初め歴史的な問題は、さまざまな見方、考え方がある中で、NHKとしてもそれらの動向もよく見きわめて検討すべきだという趣旨で申し上げたもので、政府の意向をそんたくしたり、そういうつもりは全くないわけでございます。
いずれにしましても、私の考えを放送に反映させることはないということはこれまで何度も申し上げてきましたし、今後もそういうことはあり得ません。あくまでも放送法に帰って、それをバックボーンとしてやっていきたいと思っております。
○梅村委員 籾井会長はもしかしてそういうお立場できのう答弁されたかもしれませんけれども、実際に議事録を起こしたり、私たちも田村議員に対する答弁をもう一度振り返らせていただいても、さまざまな意見を踏まえてというような言い方ではなくて、八月に政府談話が出されると言われておりますので、やはりその辺の談話が出た後に広くいろいろな形でというようにおっしゃっていると思うんですね、議事録を確認させていただくと。
さまざまな意見ということではなくて、政府の談話が出た後にいろいろ番組を検討していくというふうになりますと、私は、政府の姿勢におもねる、NHKの生命線として政府から独立した公共放送事業体ということをしっかりと宣言しておるにもかかわらず、そこら辺はやはり引き続き誤解を生む。
そういう意味で言ったのではないというふうにさっきおっしゃったのかもしれませんけれども、事実、そういうふうに議事録や発言では、政府の八月の談話が出る、その後にとおっしゃっているんですね。
やはりこれは誤解を与えますし、会長自身が、独立という立場よりも、そういう政府の動向を気にしているんじゃないかというふうに国民は引き続き不安に思うのではないでしょうか。いかがでしょうか。
○籾井参考人 お答えいたします。
私の真意は、いわゆる慰安婦問題を初め歴史的な問題は、さまざまな見方、考え方がある中で、NHKとしてもそれらの動向もよく見きわめて検討すべきだという趣旨で申し上げたもので、政府の意向を見てからどうこうするという、そんたくするつもりで言ったわけではございません。
いずれにしましても、私の見解を放送に反映させることはございませんし、放送法に基づいて報道を続けていきたいと思います。
○梅村委員 それで、実際、この間NHK自身は、慰安婦問題についての特集番組などはしばらくしていらっしゃらないかなというふうに思います。まあ、報道はあるかもしれませんけれども。
ここでやはり指摘したいと思いますのは、ことしは戦後七十年の年となっております。この問題は非常に国民的な関心も高く、もちろん、皆さんが言うように、さまざまな御議論があるわけであります。それを、この戦後七十年に、公共放送のNHKが、難しい問題だから、そして政府の談話が出てからというようなことではなくて、それは八月ですから、やはりジャーナリストの世界として、しっかりと国民の知る権利を保障していく。そこは、自律そして不偏不党ということをもうずっとおっしゃっているわけですから。
そして、籾井会長は去年の総務委員会の中でこういうふうにおっしゃっています。憲法で保障された表現の自由や放送法の規定を踏まえて視聴者・国民の期待に応えるのが公共放送だ、NHKの役割だ、また、ジャーナリズムは国民の知る権利に応えることだと認識しておりますということで、積極的に国民の知る権利に応えることの重要性もあわせて去年答弁していらっしゃるんですね。
そういう立場からすると、八月の政府の談話が出てからいろいろ考えるということは、七十年というのは十二カ月ですから、半分以上過ぎちゃってからですから、その知る権利というようなものを、やはりもう少し報道機関やジャーナリストの世界としては積極的に向き合うことも必要ではないかな。
もちろん、どういう意見がということを言っているんじゃないんです。さまざまな意見があるだけに、やはりNHK、公共放送としてはもっと知る権利に応えるべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○籾井参考人 昨年申し上げたことは、そのとおりでございます。
ただ、委員、何回も申し上げておりますが、我々は事実に基づき報道をしていくということでございますから、そういう意味において、我々としては、今後とも事実に基づき国民の皆様にもいろいろ報道をしていきたいというふうに思っております。
○梅村委員 その事実に基づく報道というようなものは、八月を待ってからじゃないとできないんでしょうか。
○籾井参考人 我々は、日ごろ事実に基づいて報道をしております。
○梅村委員 ぜひ、積極的な、そういう意味で知る権利を保障するような、そういう役割を果たしていただきたいなというふうに思います。
次の質問に移ってまいりたいと思います。
そういう問題について、この間の会長の御発言、やはりいろいろな議論がこの場でもありましたけれども、一番大事なのは、受信料を払っていただいている国民や視聴者の皆さん、そういう方々が会長の御発言の問題なんかをどのように受けとめているか、そういう議論が必要なのではないかなと思います。
それで、この間、視聴者と語る会が経営委員主催で何度かやられていると思いますけれども、こういう会、例えば四月には佐賀、五月には青森、七月には室蘭、九月には岐阜、そして五回は東京芸大、六回は水戸というようなことで、一年間にわたってずっと行われてきていると思うんです。
ここは国会の場所ですけれども、そういう直接の語る会などで出ている声を会長としてどのように受けとめて、どのように生かしていこうと思っていらっしゃるか。そこら辺はいかがでしょうか。
○籾井参考人 お答えします。
語る会は経営委員会の主催でございまして、そこに指名された理事が行っているわけです。
差し当たり、私は一度もお呼びがかかっていないのでございます。
○梅村委員 お呼びがかかっていないということなんですけれども、かなり籾井会長に関する御意見や御提案があるみたいなんです。
そういう提案や御意見の内容については、お呼びはなくても、その後御報告があるとかはありますでしょうか。
○籾井参考人 理事が出席しておりますので、簡単な報告は受けております。
もちろん、理事からの報告を受けても詳細を知っているわけではないんですが、出席者については経営委員会が決めますので、もしお呼びがかかったらということにさせていただけますでしょうか。
○梅村委員 それは経営委員会主催だということではありますけれども、実はNHKのホームページにもかなり詳しく情報公開されておりますし、私は、そういう声が経営委員会を通してもう籾井会長に伝わっていると。
かなりたくさんの具体的なお声があるかというふうに思います。
例えば、九月に岐阜で行われた語る会なんかは、かなり活発な議論だったというふうに聞いております。
この間の籾井会長の発言が女性への人権侵害ではないかというふうに思うので、そういう発言は今後は控えてほしいという発言だとか、政府寄りの報道が多いのではないかと思う、籾井会長の発言は干渉に当たるおそれがあるのではないかとか、あと、昨年十一月に経営委員会がつくられた会長の資格要件六項目というのがあったけれども、現時点でこの六項目は生きているかとか、これは籾井会長というよりは経営委員会に対する意見ですけれども、かなり具体的な声がこの語る会では出ているわけですね。
経営委員会の方に質問したいと思いますけれども、これは、責任を持って籾井会長に伝えるというような仕組みはないんでしょうか。やはりこの一年間は会長に関する意見が多かったわけですから、私は、そういう声が伝わって会長職をやっていらっしゃるんじゃないかなと思ってまいりましたけれども、いかがですか。
○浜田(健)参考人 経営委員会では、出席委員からの報告を受けたり、それから開催報告書を提出していただいたり、ホームページ上でそれらの周知を図っております。
○梅村委員 私が質問したかったのは、それが籾井会長に伝わっているか、経営委員会の方が伝える努力をしているのかということをお伺いしたかったんですけれども、いかがでしょうか。
○浜田(健)参考人 先ほど申し上げたような形で、経営委員会としては執行部との情報の共有化を図っております。
以上でございます。
○梅村委員 それぞれがそういうふうにやっているはずだということではありますけれども、さきの御答弁を聞きますと、籾井会長にはこの内容が十分具体的に伝わっていないのかなというような印象も受けます。
その語る会に参加をしてこられている視聴者・国民の皆さんは、この声が届くと。誰でもが参加できるわけじゃなくて、申し込んだ方々の中でも抽選で、そこに参加できる方というのはほんのわずかなわけですね。やはりそれだけの思い、NHKを発展させたい、NHKをこれからよくしていきたいという思いで皆さん来ているわけですから、こういう声を、少なくとも該当された、意見が出た会長を含め、当事者には伝えるべきではないかな、それが視聴者・国民のためのNHKになる一つの出発点ではないかなというふうに思いますので、ぜひその点御要望しておきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○浜田(健)参考人 御指摘を受けとめて、さらに努力をしていきたいというふうに思います。
○梅村委員 この語る会は、籾井会長に対する意見だけではなくて、経営委員会そのものの選出のあり方だとか、選出過程の中の五項目が生きているのかとか、そういう意見もあるわけですので、経営委員会の方々自身の問題としてもぜひ受けとめて、きょうは時間がありませんので、そこで出された意見もたくさんあるわけですけれども、一つ一つがどういう処理をされているのかということでいえば、ぜひ今後の改善を期待したいというふうに思います。
時間もありませんので、最後になりますけれども、受信料の問題についてお伺いします。
やはり予算の中ではこの受信料がかなりの割合、そして、金額的にも大変大きな国民のお金で支えられているのがNHKだというふうに思います。
今後八割を目指していくということであります。これだけのお金を集められているのは、NHKがいい番組をしている、私も子育てするときには子供番組をよく見ましたし、今だってたくさん見ております、そういう現場スタッフの努力、視聴者の皆さんのNHKに対する思い、そして徴収する方々の御努力、そういうので今の受信料、この予算というのは成り立っているというところに、私たちは本当に感謝の気持ちをあらわさなきゃいけないというふうに思っております。
その点で、今後八割を目指すということですけれども、私たちの地方議員のところには、そういう中で、特に都市部なんですけれども、受信料の徴収のときに、なかなか強引なやり方がふえているというクレームも来ているんです、生活相談で。
やはりその点は、視聴者・国民の立場に立つ、きのうの籾井会長のところ、営業改革を一層推進していくということは、一体として、受信料制度の理解と二つ一緒にと会長さんは言っていらっしゃると思うので、私は、八割を目指すときに、そういうところにも心を配りながらやらないといけないというふうに思っております。
時間がありませんので、一つ例を挙げると、徴収の方が来られて、中に入らせてくれと男の人が言ったんですけれども、六十代の女性で、男の人だから、だめです、入りませんというふうに断ったんです、テレビはないと言って断ったそうなんです、ないということで。そうしたら、携帯電話を持っているだろう、その六十代の方は携帯は電話するために持っていたんですけれども、テレビの受信機がついているんだったら、それは払わなきゃいけないから、今度また来る、用意しておけ、訴えるぞ、また来るということで、かなりそういう集められ方をしているというようなのが、私たちの地方議員に相談事として寄せられております。
こういうことについては、いかがお考えでしょうか。
○籾井参考人 いろいろありがとうございます。
そういう営業のところで、そういうふうな不愉快なことといいますか、失礼なこととかいうのが時々あると聞いておりますが、我々も本当にその辺については気を使いながら指導をしていきたいというふうに思っております。
それから、いろいろ意見を聞けという話については、私めも、その語る会というものにも機会があれば出させていただきたいと思います。
引き続き、NHKをよろしく御愛顧いただきたいと思います。
○梅村委員 消費者庁に伺いましたら、NHKに関する相談件数は、二〇一二年の五千八百六十八件から二〇一四年には七千百七十八件にふえていて、五年前と比べると相談件数は二倍になっているんですね。
ただ、徴収員の方は本当に一生懸命やっていますので、そこにまた徴収員の方々にもっとやれというような尻をたたくようなやり方ではなくて、いい番組をつくり、払いたくなるような、そういうNHKに改革していっていただきたい。
もちろん、徴収の努力も必要ですけれども、そういう御努力を心から期待して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。