日本共産党の梅村さえこ議員は、1月13日の衆院総務委員会で、昨年9月に発生した関東・東北豪雨災害で深刻な住宅被害を受けながら、適切な行政支援が受けられなかった被災者への救済を求めました。
栃木県では、全壊24棟、半壊225棟、床上浸水1967棟などの甚大な被害が発生しています。ところが、災害救助法にもとづき、「半壊」以上の被災者に支給される住宅応修理の適用実績がまったくありません。
梅村氏は「住宅応急修理」制度そのものが被災者に周知徹底されず、自治体担当者も制度を十分理解していないため、「本来、使える制度が使えなかった人がいる」と指摘。「国は、制度の適応が現場までゆきとどいているかをつかみ、被災者支援に能動的にのりだすべきだ」とただしました。
内閣府の緒方俊則大臣官房審議官は「自治体向けにわかりやすい(制度)説明に努める」と述べつつ、「災害救助法の適用を現時点で改めて実施できない」と答えました。
梅村氏は、「今からでも、できる施策を検討することが必要だ」として、自治体が行う被災者支援のための経費需要に必要な財政措置をとるよう要求。高市早苗総務相は「実情を聞きながら、財政運営に支障が生じないよう適切に対処する」と述べました。
【「しんぶん赤旗」2016年1月15日付】
ー会議録ー
○梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。
昨年九月の関東・東北豪雨被害について質問したいと思います。
今回の災害では、八名の死者、住宅被害は二万件弱にも及ぶ大被害となりました。
そこで確認させていただきたいと思いますが、災害救助法に基づく住宅の応急修理、これは住宅被害認定が半壊以上の世帯に対し適用され、年収要件などの問題点はありますけれども、上限五十六万七千円、被災世帯を応援するものとして活用されてきたものだと思います。これが栃木県においてはゼロになっていること、こういうことに間違いないでしょうか。
○緒方政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおりでございまして、災害救助法による住宅の応急修理につきましては、実施していない旨、栃木県から報告を受けております。
○梅村委員 資料一にも出させていただきましたけれども、修理済み世帯で、茨城では千三百七十一、宮城でも六十九件あるのに、栃木ではゼロとなっております。
栃木県も、全壊二十四棟、半壊二百二十五棟、床上浸水千九百六十七棟という大変甚大な被害が出ているわけで、それなのにどうして実績がゼロで、ましてや、そもそも、この表にありますけれども、修理受け付け世帯さえもゼロなのか、お聞かせいただきたいと思います。
○緒方政府参考人 お答えいたします。
平成二十七年関東・東北豪雨災害におきましては、九月九日に栃木県は災害救助法の適用を決定いたしました。その後、栃木県におきましては、被災されました方々に対します災害救助法による救助に鋭意取り組んでいただいていたところでございまして、その実施状況につきましては、私どもといたしましても日々報告を受けていたところでございます。そして、県の方から、十月二十二日に、住宅の応急修理につきましては、その必要がない旨連絡を受けたところでございます。
災害救助法による救助の実施主体につきましては都道府県知事でございまして、そのお立場から、県内の被災の状況をもとに、栃木県におきまして災害救助法による住宅の応急修理は不要と判断されたものと理解をいたしております。
○梅村委員 県からそういう報告があったからしていないということだと思うんですけれども、実態を調べれば、余りにも冷酷だというふうに思います。安倍首相自身も被災地を直後に訪問されて、生活再建支援をしっかり進めるというふうに被災者の皆さんに約束されております。国は、自治事務ということで自治体に任せ切りになるべきではないのではないかなというふうに私は思います。
今回、栃木県を改めて訪問させていただきました。二枚目の資料ですけれども、これは小山市の農家の方のお宅です。豊穂川という土手のすぐ下にありまして、激流が家を襲って土砂が入り込んで、寝室もめちゃめちゃ、お風呂も、これを見ていただくと、タイルが剥がれているというふうに思います。しかも、見ていただきたいのが、浸水がドアノブの上、一メートルなんですね。一メートルということになると、もうこれは大規模半壊の適用事例になってもおかしくないのではないか。
そうなってきますと、生活再建支援法の適用も検討されるべきような事例なのではないかというふうに私は感じたんですけれども、このお宅は半壊認定にとどまっております。半壊認定で済まされるばかりか、半壊なら受けられるはずの住宅応急修理がこのお宅でも受けておられない。
伺ってみると、支援は市の見舞金の二十万円だけで、あとは何もないというふうに悲鳴を上げられておりました。このお宅は、高齢の御両親が家を直すまでの四カ月間老人ホームに入居しなければならなくなって、それだけで百万円かかり、また、こういうものを直すのに材料費だけで四百万円かかったというふうに言っていました。こういう方々にもし住宅応急修理制度が届いていればどんなに助かったことかということで、現地に行き、大変心を痛めました。
今からでも国として、住宅応急修理がなぜゼロなのか早急に調査をして、本来使えるべき人で使えなかった人にはふさわしい対応措置を講ずるべきではないかと思いますが、その点、いかがでしょうか。
○緒方政府参考人 お答えいたします。
災害救助法によります住宅の応急修理の救助期間につきましては、一カ月というふうになっておりますが、国と協議の上、延長が可能というふうになっております。
栃木県におきましては、国との協議の上、住宅の応急修理の期間を十月末まで延長いたしておりましたが、実際には応急修理を行うことなく、十月三十一日をもって全ての救助を終了したといった報告を受けておりまして、現時点で改めて災害救助法による救助を実施していくといったことはできないところでございます。
なお、内閣府におきましては、今次の災害におきましても、発災直後の九月十七日に職員二名を栃木県に派遣いたしまして、県と共同で災害救助法の説明会を開催いたしまして、住宅の応急修理を初め、被災者の方々が利用可能な制度の周知を図っていくなど、被災者に対します応急救助が適切に実施されますように助言を行っております。
また、救助期間が終了するまでの間におきましては、体制を組みまして、県や市町村からの問い合わせにも対応してまいったところでございます。
○梅村委員 今の御答弁ですと、しっかりと説明した、適用できるようにいろいろな配慮を行ってきたということですけれども、私、小山市に行って何軒か被災者の方に聞いてみましたけれども、住宅の応急修理制度があることを知っている方は、私が会った限りでは一人もいらっしゃいませんでした。
先ほどの農家の方ですけれども、市からの見舞金だけだ、ほかに制度はないですかと言ったら、紙は渡されたんですけれども、何にも説明はない。
いろいろ調べていきますと、ある行政の方は、きょう資料の三枚目にありますけれども、避難所にいないとこの制度が適用できないと思っていたので、避難所にいる人には知らせたけれども、それ以外には知らせていないとか、二階建てのお宅には適用されないと思っていたというような回答もあるわけです。それはそんな認識では全然ないというふうに思います。
ただ、どうしてそういうことが現場で起こっているかというと、この用紙が参考例として出されているわけですけれども、「現に、避難所、車等で避難生活を送っており、」というようなのが「全ての要件を満たす者」として必要だというふうに書かれていて、自治体の職員の皆さんはこれを見ながら対応しているので、必要な措置が被災者の人にとれていないということが一つ、いろいろ調べる中でわかってまいりました。
そして、やはり役所の皆さんも、甚大な被害を目の前に、また、制度そのものを理解するだけでも大変なわけですから、ぜひ、内閣府、国としては、説明したから、あとは自治体でやってくれ、周知したはずだというような言葉で終わらせないでいただきたいと思うんです。
なぜならば、被災者の皆さんは今でも苦しんで、新しい年を、まだ工事が終わらない、まだ借金を抱えている、そういった中で暮らしていらっしゃるわけですから、本来受けられるべき制度が、制度が周知されなかったために申請もせずに受けられていないわけですから、私は、これからでも必要なことを措置したり、また、まずは実態を調査すべきだ。やっているはずだではなくて、被災者の皆さんが四カ月たってどういうふうに置かれているかということをぜひ調べて検討していただきたいと思います。その点、いかがでしょうか。
○緒方政府参考人 お答えいたします。
御指摘のあった資料に関しましても拝見いたしましたけれども、引き続き、私どもといたしまして、対自治体向けにわかりやすい説明に努めていきたいというふうに考えております。
また、先ほど申し上げましたとおり、栃木県の方からは、応急修理を行うことなく十月三十一日をもって全ての救助を終了したといった報告を受けておりますので、災害救助法の適用につきましては現時点で改めて実施はできないということにつきましては御理解賜りたいと思います。
○梅村委員 それは、理解賜りたいといっても、被災者の皆さんは知らなかったわけですから、やはりしっかりと調べて措置を考えていってほしいということを強く要望したいと思います。
最後に、高市大臣も常総の方に行かれて、十八日の記者会見では、被災地方公共団体の実情を十分に伺いながら、特別交付税の措置を含めて、地方交付税や地方債による地方財政措置を講じ、その財政運営に支障が生じないように適切に処理してまいりたいというふうに述べられております。
今御紹介したような実態が現地ではあるわけでございます。今後、被災地の実情に応じて求められる支援を自治体が考えることがさらに必要になってくることもあろうかと思うんですけれども、その際、さまざまな経費の需要にしっかりと応えることが強く求められていると思いますが、その点、最後に伺って終わりたいと思います。
○遠山委員長 時間が超過しておりますので、簡潔な御答弁でお願いします。
○高市国務大臣 既に、被災地、特に栃木県につきましても、直接知事や市長さん、町長さんからも要望を大臣室で伺いまして、十二月に特別交付税を交付したところでございます。
被災団体の実情を今後ともしっかりお伺いしながら、その財政運営に支障が生じることがないように適切に対処してまいります。
○梅村委員 終わります。ありがとうございます。
ー配布資料ー