衆院委で梅村氏
日本共産党の梅村さえこ議員は7日の衆院総務委員会で、経済的困窮から地方税を滞納する住民に対して、生存権を踏みにじるような‘‘差し押さえ‘‘などの徴税行政が横行している問題を取り上げました。
梅村氏は「納税者に親切に接し、苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない」とする国税庁「税務運営方針」が、地方税の徴収業務にも当てはまるのかと質問。総務省の林崎理自治税務局長は「当てはまる」と答えました。
梅村氏は、重税を苦にした自殺事例や、最低限の生活費を下回る水準での給与差し押さえが行われているなど実態を紹介して「税務運営方針とかけ離れた徴税行政が行われている」と告発。長引く不況や度重なる増税、格差と貧困の広がりにふれ、「住民に信頼される税務行政の確立」を強く求めました。
とくに梅村氏は、10年間で自治体の税務職員が約1万人減少していることや、平均経験年数が数年と短くなっている税務職員の実態を示し、そのしわ寄せが職員の労働強化や機械的な徴税対応につながっていると指摘しました。
高市早苗総務相は滞納処分について、「個別の実情を十分に把握し、適切に行うべきだ」と応じました。
【「しんぶん赤旗」2017年3月8日付】
―会議録ー
○梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。
私は、昨年の本委員会で、一つの市で差し押さえ件数が年一万件を突破する群馬県前橋市の地方税の徴収実態について、残高が三百円、ゼロという預金口座も差し押さえる異常事態にあること、差し押さえ禁止財産である年金や給与、児童手当も預金口座に振り込まれれば容赦なく差し押さえるのは、憲法、国税通則法、地方税法にも反する、生存権を踏みにじる徴税行政ではないかと、「滞納者追い込む自治体 地方税徴収 生活苦でも」という東京新聞の報道記事も紹介しながら質問いたしました。
その際、高市大臣からは、地方団体に対しては、一昨年も昨年も、そしてことしの一月に入ってからも、地方税行政の運営に当たっての留意点ということで事務連絡を発出いたしました、その中で、滞納処分に関しては、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めていただきたい、各地方団体におきましては、この要請をしっかりと受けとめていただいて、何せこれは法律事項ですのでと答弁がありました。
しかし、一年たちましたが、きょう資料でも出してきております、例えば埼玉新聞ですけれども、「地方税などの滞納 生活苦でも差し押さえ」、こういう報道を初め、ほかのマスコミも、年金、保険を差し押さえる、急増、役所の非道、やり過ぎだ、こういう報道がありまして、なかなか是正に結びついていない現実があると思います。大きな社会問題になっていると思います。
私は、事態は、抜本的な対応が今住民の皆さんの暮らしとの関係で必要になっているのではないかという点から質問したいと思います。
まず初めに、国税庁に確認したいと思います。
税務運営方針というもので税務職員と納税者の関係がどううたわれているか、まず御説明いただきたいと思います。
○田中政府参考人 お答え申し上げます。
税務運営方針は、昭和五十一年に、国税庁長官が職員に対しまして、税務行政を遂行する上での基本的な考え方を示したものでございます。
この運営方針におきまして、納税者との基本的な関係を次のように示しているところでございます。
納税者と一体となって税務を運営していくには、税務官庁を納税者にとって近づきやすいところにしなければならない。そのためには、納税者に対して親切な態度で接し、不便を掛けないように努めるとともに、納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾け、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないよう、細心の注意を払わなければならない。
国税庁といたしましては、この運営方針の趣旨に沿って税務行政を進めているところでございます。
○梅村委員 続いて確認したいと思いますけれども、二〇一〇年四月二日の財務金融委員会での佐々木憲昭議員とのやりとりで、当時の総務副大臣が、「地方税の徴収業務についてもこの精神が当てはまる」と答弁されております。
改めて確認したいと思いますが、総務省としてそれは現在も変わらないかどうか、お願いいたします。
○林崎政府参考人 お答え申し上げます。
地方税の税務行政の運営につきましても、御指摘の税務運営方針の精神が当てはまるという認識に変わりはございません。
○梅村委員 権力を行使する、そういう部門として、納税者に対して親切な態度で接し、不便をかけないようということで、資料の二枚目にありますけれども、税務運営の基本的な考え方ということでしっかりと示され、今日もこれが国税だけではなくて地方税の徴収行政においても生かされる、適用されるという御答弁が確認できたと思います。
ところが、昨年もこの委員会で質問させていただきましたけれども、現場では全くかけ離れたようなことが事実行われているということは、直ちに改善しなければ、私は、住民の皆さんの命、暮らしは守れないというふうに思っております。
例えば、さいたま市なんですけれども、重税を苦に自殺をされた方も出ておられます。
先ごろ、これは市議会でも問題になりましたけれども、闇金で借りても納付する人もいる、死んで保険金で納付する人もいる、生存権などの権利は期日までに税金を納めている人のみに認められる権利だ、こういうような言葉や、仮に病気で通院したければ完納してから通院するのが常識だ、こういう納税者の生存権を否定しかねない徴税行政、言動があったと議会でも大問題になりました。
また、冒頭の前橋市でも、つい最近でも、給与の差し押さえが最低限の生活費を下回るような金額で行われているという生活相談もあります。
忘れられないのは、千葉では二〇一〇年に、七十七歳の男性が年金を差し押さえられて餓死する事件がありました。また、大阪でも、自殺に追い込まれたBさんという方は、事業に失敗した次男の借金を肩がわりして、毎月一生懸命十万円ずつ分納していたのに、十万円じゃ話にならない、破産しても税からは逃れられないなどと言われていたといいます。
こうしたさまざまな事例があるわけですけれども、改めて、この税務運営方針とかけ離れた税務行政が行われている。
そもそも、もちろん、税の公平さは徴収行政でも常に確保されなければならないと思います。同時に、国税徴収法制定の責任者である故我妻栄東大名誉教授は、行政に与えられている強権力と裁量権は、悪質な滞納者に対してのみ、最後の手段として行使すべきもので、濫用してはならない、制度の運用に当たっては、慎重の上に慎重を期することが当然の前提として了解されているというふうに指摘をされております。
今、とりわけ長引く不況のもとで、また、たび重なる庶民増税、住民税も一律一〇%化されました。格差と貧困の広がりの中で、特に、住民の皆さんの中でも低所得層の皆さんへの増税がこの間相次いできたと思います。そういう中で、納税したくてもできない、大変な苦労をしておられる住民の皆さんが今いらっしゃると思うんです。
そういう滞納がふえている背景も踏まえて、住民の暮らしを守るためにも、税務運営方針、国税徴収法の原点ともいうべきこうした考えの中身をはっきりさせて、徴税業務をやっている方々に丁寧に行き届かせていくことが今改めて必要な情勢になっていると思いますが、この点、いかがでしょうか。
○林崎政府参考人 お答えいたします。
御指摘ございましたように、納税者に対して丁寧な対応を心がけるということはいわば当然でございまして、これまでも、納税者の信頼確保のための公平かつ適正な税務執行を求めてきたところでございます。
今後とも、税務職員を対象とした各種会議や研修の場におきまして、この認識に立って対応してまいりたいと考えております。
○梅村委員 ただ、これまでも研修だとかさまざまな努力を行われてこられたと思いますし、きょう私が質問しているのは、昨年のちょうどこの時期も同じような質問をさせていただいたんですが、なかなか現場のところではそういう改善が行き届いていない。だから、やはり新たないろいろな対策が必要ではないかということで御質問しているものですから、そこで、こういう原点や、そもそもの関係性の問題も含めて、さらに中身をしっかりとお知らせしていくことが必要じゃないかという質問をさせていただいております。
その点、いかがでしょうか。
○林崎政府参考人 ただいま御指摘いただきましたとおりでございますけれども、本年度も、私どもからは、一月二十三日付の事務連絡におきまして、「平成二十九年度地方税制改正・地方税務行政の運営に当たっての留意事項等について」ということで、各都道府県から都道府県内の市区町村、市区町村議会に対しましても速やかに趣旨を連絡いただくようお願いをしているところではございまして、そういった中で注意も喚起しているところでございます。
○梅村委員 先ほど読み上げていただいた税務運営の基本的な考え方という中身について、ぜひ行き届かせていただきたいというふうに思います。
さて、同時に、今、そういう言動があるということで問題になっていますけれども、その地方団体の職員の皆さん自身も大変御苦労されながら働かれているのではないかなというふうに思います。
その大きな要因は、先ほども田村議員も質問がありましたけれども、地方の税務職場においても、やはり人員不足が大きな問題になっている、そして労働強化、管理強化が進んでいるという点があろうかというふうに思います。
資料の三ページで、この間、税務職員が地方団体においてどういう経緯だったのかという表を用意してまいりました。
この十年間を比べただけでも、約一万人税務職員の皆さんが減っていらっしゃるという事実があるわけですね。特に、この間には税源移譲がありまして、特に地方の地方税のさまざまな実務は、金額的にもふえてきているというふうに思うんです。ですから、本来であれば、それに伴って地方の税関係の職員さんがふえていいはずなのに、むしろ一万人も減っている。これはやはり非常に問題だというふうに思います。
自治労連の税務部会が、少し前ですけれども、二〇一二年に取り組んだ実態アンケートによりますと、人員不足だというふうに答えた方が約七割を超えています。そして、担当者一人当たりの担当件数は、滞納者だけで見ても七百件以上が約三割を超えて、中には一千件から二千件も担当している職員もいるというふうにアンケートで答えています。
丁寧な対応をしていく、そういうことを繰り返し述べていらっしゃるけれども、滞納者と向き合うことも丁寧な滞納整理を行うことも困難だというふうな悲鳴が、行う中で、早くやらなきゃいけないということで、機械的な、また、時には焦って暴言のようなことが、これは許されることではないんですけれども、やはり地方に働く税務職員の皆さんも大変な御苦労の中で働かれているのではないかなというふうに私は思います。
先ほど御紹介があった事務連絡の中でも人員が減ってきているということは書かれてあると思いますので、やはり地方の税務関係職員さんが減ってきているということはお認めになりますでしょうか。
○林崎政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、地方団体の税務職員数というのは減少傾向にある、お示しいただいた資料でも確認いただけると思いますけれども、減少傾向にあるということでございます。
○梅村委員 それで、減っているだけではなくて、例えば冒頭で指摘させていただいた前橋ですけれども、その課にいる平均の年数を調べますと、大体、この収納課というのは平均でも二・二年になっているわけですよね。
法律上も、またいろいろな財産関係の対応からしても、大変専門的な力が求められる分野がこの徴収分野だと思います。
先日、国税庁の方に聞きましたけれども、国税関係というのは、そこに専門にいらっしゃるので当然かもしれないんですけれども、二十一年というのが平均在職年数だというふうに聞きました。それに対して、これだけ住民の皆さんが困っている、しかも法律的な対応が必要なのに、前橋においては平均在課年数が二・二年ということは、ここでも、やはり職員の皆さんの苦労だとか苦痛というのは想像ができるなというふうに私も思います。
次の資料を見ていただきたいと思うんですけれども、この資料は、国税における税務関係職員の皆さんがどれだけ研修をして、そして税務署に行っているのか。高校を卒業した方々も、最初は一年間行って、それから現場の税務署に行く、そしてまた中等科ということで三カ月の研修がある。大学を卒業した方々も、三カ月間の基礎研修があり、それから税務署に一年行き、また専攻税法研修というのが二カ月あって、そしてまた現場に出て、また専科として七カ月ある。
これだけ、まだまだこれでも足りないというお声もあるかもしれませんけれども、こういう研修制度があるのに比べて、地方の税務職場の皆さんというのは、さまざまな研修の努力がされてきているとは思いますけれども、この在課年数も含めまして、やはり住民の皆さんとの関係では、住民の皆さんにむしろしわ寄せが行ってしまうような、そういう働き方の環境があるのかなというふうに思います。その点はどのようにお考えでしょうか。
○林崎政府参考人 お答えいたします。
各団体の組織運営、人事などにつきましては、当然各団体の御判断で行われているものと思いますけれども、税務職員の研修という点に関しましては、これは各都道府県にある自治研修所でありますとか、あるいは大きい市などではやはり独自の研修所なども持たれていると思います。そういった中で税務の研修も行われているものと承知しております。
また、総務省としても、自治大学校におきまして税務専門課程を設けておりまして、地方税の賦課徴収事務に携わる職員の資質を向上させることを目的として、高度な研修を実施してきているところでございまして、こういう研修内容につきましても、一月二十三日開催の税務担当課長会議でも説明をいたしまして、地方団体の方に自治大学校研修につきまして積極的な活用をお願いしているところでございます。
○梅村委員 そうした研修はぜひ充実をしていっていただきたいというふうに思いますし、特に、そのもとで、まず差し押さえが徴税の中心になるのではなくて、やはり先ほどの税務の運営方針にもありますような、しっかりとした納税者と徴収側の信頼される関係性づくり、そういうことも含めてしっかりと内容を広げていっていただきたいというふうに思います。
そして、次に伺いますのは、その事務連絡のもとで、人が減ってきているのと一体的な問題として、広域化の問題というものが昨年の事務連絡から初めて明記されるようになったかというふうに思います。私は、この問題は大変重大な問題だというふうに思っています。
この間、この広域化、例えば宮城県地方税滞納整理機構の問題などでも、仙台の弁護士会の皆さんから要望書が出されてきております。また、河北新報の中でも、徴税が第一主義になっているのではないかというような社説が掲げられるなど、このいわゆる滞納整理機構、広域化の中でむしろさらに徴税が強まってきているという問題が各地で生まれているのではないかと思いますが、この点はどのようにつかんでいらっしゃいますでしょうか。
○林崎政府参考人 お答えいたします。
先ほど御指摘ありましたような税務職員の減少という中でも、これは当然に納税者への丁寧な対応というのは必要でございます。
そういったことも踏まえまして、各地方公共団体におきましては、いろいろ努力をしてきているところでございます。
今御指摘ございました徴収事務の広域化といった点、あるいは情報システムの利活用、電子申告の普及、あるいは専門部署を設置するといったようなことで、効率化を図りながら、一方で適正な執行に努めるよう努力をしているものと認識しているところでございます。
○梅村委員 現場で問題になっていることが、リアルにまだつかめられていないんじゃないかなというふうに思います。
仙台の弁護士会の皆さんの要望というのは、弁護士会に対する多重債務者などからの相談事も含めて、一括での納付を強く求められた、支払いが困難な金額での分割支払いしか認めてもらえなかった、民間金融機関から貸し付けを受けて納付するよう求められた、そういう相談がたくさんあるので、その改善を求めているのではないかなというふうに思います。そういう実態が現場にあります。
改めて、最後に高市大臣に聞きたいと思います。
行き過ぎた自治体の徴収が、経済的に困っている人を精神的にも経済的にも追い込んでいる事態が引き続き進行しております。住民の福祉の増進に反するこうした問題は、直ちに打開が図られるべきだと思いますし、職員の人員や待遇改善と一体で抜本的な対策をぜひ求めたいと思います。いかがでしょうか。
○高市国務大臣 地方団体の歳入というものを確保するということとともに、地方税に対する納税者の方々の信頼を確保するために、徴収対策の一層の取り組みを進めるということが重要だと考えております。
先ほど申し上げましたが、地方団体では、地域の実情に応じて徴収対策に取り組んでいただく必要がございますが、地方税の滞納処分については、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で、地方税法の規定を踏まえて適切に行われるべきものだと考えております。
これも先ほど局長が申し上げましたが、この点も含めまして、税務行政の運営に当たっての留意事項を地方団体に対して毎年一月に文書で通知しておりますので、各地方団体でこれを踏まえて税務行政の適切な運営に取り組んでいただきたいと存じます。
○梅村委員 住民に信頼される税務行政の確立を求めて、質問を終わります。
ありがとうございました。
ー配布資料ー