梅村さえこ議員は16日の衆院総務委員会で、地方自治体が窓口業務で行っている公権力の行使を地方独立行政法人が行えるようにする地方自治法改定案の問題点を批判しました。
同改定案は、地方独立行政法人の業務に、これまで民間委託でできなかった審査、決定などの業務を含めた一連の窓口業務を追加するものです。政府は、「定型的な業務」だけ限定するとしていますが、具体的な範囲は省令で決めていくとしています。
梅村氏は、戸籍交付は一定の手順で処理する作業ではないと主張。「民間委託はできないとされてきたことが、今後どうなるのか全く不明なまま省令で定めるやり方はおかしい」と追及しました。
総務省の安田充自治行政局長は「一部には否定型的な事務があると考えており、その場合は省令に入れない。地方独立行政法人への委託を押し付けない」と答弁しました。
同改定案での窓口職員の待遇について安田氏が「新たな職員を雇い入れるか現在の職員が移行するケースがある」と答えたのに対し、梅村氏は「窓口業務は大変重い責任を負っている」と公務員でこそ担えると主張しました。
【「しんぶん赤旗」2017年5月22日付】
ー会議録ー
○梅村委員 地方独立行政法人法改正案について質問いたします。
本法案は、第二十一条五号に業務の範囲を追加し、地方独立行政法人の業務に新たに窓口関連業務を追加するものですが、お手元にある総務省資料の改正概要にあるフローチャートのように、これまで民間委託できなかった公権力の行使部分、つまり、このフローチャートでいえば、青の部分を赤にしていく、審査、決定などの業務も含め、一連の窓口業務を一括して地方独立行政法人ができるようにするものだと聞いております。
そこで、まず伺いますが、どうして公権力の行使業務が地方独立行政法人だと可能になるのか、確認させてください。
○安田政府参考人 お答えいたします。
御指摘のように、市町村の窓口業務には審査や交付決定等の公権力の行使が一部含まれておりまして、これらを含めて一括して外部の主体に取り扱わせるようにするためには、法律によって授権する仕組みが必要でございます。
今回、これを地方独立行政法人において行うということにしているわけでございますけれども、それについて述べさせていただきますと、地方独立行政法人は、組織、運営の根幹につきまして地方公共団体の関与が制度として担保されておりまして、地方公共団体の責任において組織、運営の適正を確保することが常に可能であるというふうに考えていることがまずあります。
その上で、今回の制度設計におきましては、地方独立行政法人が行うことができる窓口業務を、定型的な業務として法律の別表に掲げたものに限定いたしまして、かつ、市町村の強い関与のもとに業務を行う、こういう制度設計をとったわけでございます。
これらの措置を講ずることにより、公権力の行使に当たるものを含めた市町村の窓口業務を、一括して地方独立行政法人に取り扱わせることができる、このように判断したところでございます。
○梅村委員 今の御答弁にあったように、今まで民間委託ではできなかった一連の窓口業務を、地方公共団体から一括して丸ごと切り出していく、そういうことを可能にするものだというふうに思います。
安倍内閣は、骨太方針二〇一五で、窓口業務のアウトソーシングなど汎用性のある先進的な改革に取り組む市町村を二〇二〇年度までに倍増させるということを述べられております。
そこで、確認いたしますが、先ほど委員の質問の中で、ただ選択肢の一つであり、押しつけるものではない、そういう御答弁があったと思いますが、それでいいのかどうかということを一つ確認させていただくのと、あと、あわせて、定型的な業務だから可能になるということだったが、逆に、今回該当しないとされるのはどんな業務なのかについて、お答えください。
○安田政府参考人 お答えいたします。
まず、選択肢の一つかどうかということでございますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、あくまでこれは選択肢の一つでございまして、具体的にこの制度を活用するかどうかは各市町村が判断すべきものと考えているところでございます。
定型的でない事務として除外されるものは何かという、お答えでございますけれども、御指摘のように、今回の制度設計におきましては、地方独立行政法人は、窓口業務のうち定型的な事務として法律の別表に掲げたものにつきまして、公権力の行使にわたるものを含めて行うことができるとしているものでございます。
定型的な事務というのは一体何かということから申し上げさせていただきますと、客観的、外形的に一定の手順で処理が可能なものであって、内容について、裁量性のある判断の余地が小さいもの、こういうものを指すものと私どもは考えているところでございます。
このため、まず、法律の別表からは、非定型的な事務が除かれる。例えば、生活実態の確認が必要となる生活保護の受給申請の受理でございますとか、人の身分関係を創設し、あるいは判例、法規等の専門的知見の理解が必要である戸籍の届け出の受理、こうしたものは、市町村長の指揮監督権のもとで職員が引き続き処理することが適切であるため、除外しているものでございます。
また、別表に掲げたものであっても、その一部には非定型的な事務が含まれるものがあることから、その詳細を総務省令に委任しているところでございまして、例えば、住民基本台帳に関する事務については、記載事項の調査のうち、申請書等との突合による単純な字句の修正は地方独立行政法人の対象業務となると考えられますけれども、一方で、その者の居住実態も含めて住所について調査を行って職権により記載する事務につきましては、裁量性のある判断の余地が大きいものでありますので、地方独立行政法人の対象事務から除外することを想定しているところでございます。
○梅村委員 これは大変大切なところだというふうに思います。
今御答弁があった点については、公権力を行使する業務であっても定型的業務だとして切り出していく一方で、総務省令の中で個別の事案については検討もしていくということがあったかというふうに思います。
それでは、例えば戸籍について聞いていきたいと思います。
この間、二〇一四年に東京都足立区において戸籍法違反や偽装請負の実態が明らかになり、委託した相当部分を直営に戻さざるを得なくなった事例があると思います。
このもとで、この二年間ほど、法務委員会の中では我が党の仁比聡平参議院議員も質疑に立ちましたが、二〇一五年三月三十一日に、法務省民事局民事第一課補佐官名の事務連絡「戸籍事務を民間事業者に委託することが可能な業務の範囲について」ということで、戸籍事務の民間委託に関するQアンドAというものが出されました。ここでは、公権力の行使、検認、判断が必要な業務は、民間委託はだめだ、自治体の職員がみずからやること、さらに、市町村の執務能力が低下することのないよう十分な対策を講じるようにということで、かなり詳細な注意事項を指摘してきた経過があるというふうに思います。
しかし、今答弁があったわけですけれども、今回の法改正案を読む限りでは、こうした例えば戸籍業務をめぐるこの間の議論の到達が今後どうなるのかということは非常に曖昧で、先ほどの御答弁のように、総務省令、今後の協議の結果、何ができて何ができないのかということを記述していくということでは、余りにも重大な戸籍をめぐる議論の経過との関係でいえば、このまま本当に法案を通していいのか、本当に公権力にかかわる部分がもしかしたら可能になっちゃうんじゃないか、これは残されるのか、そういう積み上げてきた法務委員会での議論が、今後、窓口業務でどうなっていくのかというのがやはり私はさっぱり見えないものだというふうに思うわけですね。
そこで、さらに総務省に聞いていきたいと思いますが、QアンドAで示されてきた、公権力などにかかわって自治体職員がやるべきだとされた戸籍業務、例えば、私も職員の方に聞いたんですけれども、交付は、先ほどおっしゃった一定の手順で行われるような作業でもなくて、裁量性の余地が小さいものという定型的業務にとどまるような実務じゃないと思うんですね。本人であればいわゆる証明書を持ってくるというのはあると思いますけれども、第三者請求、弁護士さんだとか行政書士だとかいろいろ、遺産の問題とかさまざまな請求があると思います。
私も読ませていただきましたけれども、そういうQアンドAを読むと、外形的に一定の手順、裁量性の余地が小さいものということでは含まれないものがたくさんあると思います。こういう点は、そのまま地方独立行政法人に移行するのではなくて、このまま、民間委託というか地方独立行政法人の委託はだめだという判断を省令でされていく可能性はあるのかどうかについて、確認したいと思います。
○安田政府参考人 お答えいたします。
まず、戸籍についてどういう事務を別表に掲げるかということにつきましては、立案段階から法務省さんの方と協議させていただきまして、別表の書き方といたしましても、「戸籍法による戸籍若しくは除かれた戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍若しくは除かれた戸籍に記載した事項に関する証明書の交付に関する事務であって」という形で、まずここで一段階絞り込んでおります。
つまり、住民基本台帳法の方は少し広目な書き方になっておりますが、戸籍につきましては、先ほど申し上げましたように、人の身分関係を創設し、あるいは判例、法規等の専門的知見の理解が必要な事務がかなりあるということでございますので、まず法律段階でも絞り込んでおります。
かつ、今後、具体的に省令を定めるに当たりましては、その別表に掲げたものであっても、一部には非定型的な事務が含まれるものはあると考えておりますので、総務省令を定める際に、関係府省と協議を行った上で事務の範囲を定めるということになるものと考えているところでございます。
○梅村委員 では、答弁として確認させていただきたいと思いますが、一部にはそういうものがあるということで、今後、検討をきちんとしていくということでよろしいということですね。
○安田政府参考人 お答えいたします。
ただいま申し上げましたとおり、別表に掲げられたものであっても、一部には非定型的な事務が含まれるものはあるものと考えておりまして、今後、関係省庁と協議の上で検討してまいりたいと考えております。
○梅村委員 今御答弁があったように、この戸籍については、いろいろ議論を経て、今の到達があると思います。そもそも、戸籍業務は、人の親族的身分関係を登録、公証するという極めて重要なものであり、住民の人権やプライバシーにかかわるものですので、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。
そこで、今度は法務省に聞きますが、非常に、この間、成り済ましの犯罪、しかも重大犯罪が後を絶たないと思います。例えば、この間、殺人事件があったときに、容疑者が被害者から奪った健康保険証を悪用して戸籍謄本を取得して、この謄本を使って旅券を申請し、交付をされて、いろいろ犯罪を犯す、成り済ましだとか、そういうことというのは結構あるというふうに思います。
こういうことを踏まえると、公的権力を行使するという認識を強く持った戸籍窓口業務が一層大事になっているというふうに思いますが、法務省としても、この間積み重ねてきた議論をしっかりと今後も踏まえていく立場に立つかどうかというのを御答弁お願いしたいと思います。
○金子政府参考人 お答えいたします。
戸籍謄本等の交付請求につきましては、委員御指摘のとおり、個人情報の保護が必要とされております。
そういう情勢に鑑みまして、平成十九年に、それまでのいわゆる戸籍公開の原則を見直しまして、戸籍謄本等を請求することができる場合を制限する旨の戸籍法改正を行ったところです。
同改正におきましては、現に請求の任に当たっている者の確認を初めとする戸籍謄本等の不正請求を防止するための仕組みを設けたところでありまして、これらの点について市区町村に対する研修等を実施するとともに、日本行政書士会連合会等の関係団体に対して、戸籍法施行規則に定める統一請求書の適正な管理等について周知を要請し、統一請求書を紛失した場合には、報告を求め、全国の市区町村に周知するなどの取り組みを行っているところでございます。
このような戸籍をめぐる関係諸法令の趣旨とかあるいはこれまでの御議論を踏まえて、今回の改正についての省令の協議においても検討してまいりたいというふうに思います。
○梅村委員 今御答弁がありましたように、二〇〇七年の戸籍法の改正、これは大変重要なことだったというふうに思います。それまで公開制度だった、そして個人情報の保護も図ろうということ、また、記載の真実性を担保するために本人確認をしっかりとやっていくことを含めて強化をされたというふうに思います。そうなってくると、より厳密な窓口対応が必要だというふうに思います。そして、職員の執務能力が極めて高いものが、改正によって一層求められてきた経過があるというふうに思います。
そこで、総務省に改めて確認しますが、地方独立行政法人の窓口業務は誰が担うことになるのか。身分ですね、今窓口業務にいらっしゃる方々が、地独法の五十九条などに基づけば、身分が変わっていくと思いますが、そこを確認させていただきたいと思います。
○安田政府参考人 お答えいたします。
地方独立行政法人の職員でございますけれども、これはさまざまなケースがあると思います。
一つには、新たな地独法を設立した際に、新たな職員を雇い入れるというケースもあると思いますし、今御指摘ございましたように、現に窓口業務に従事している職員が地独法法の規定に基づいて移行するというケースもあるというふうに考えております。
この地独法法の規定によって移行する場合には、別に辞令を発せられない限り、特段の手続を経ずに当該地方独立行政法人の職員になるもの、このようにされているところでございまして、市町村の職員から地方独立行政法人の職員になる道がここに開かれているということでございます。
○梅村委員 今の御答弁ですと、新たな職員を雇う、もしくは、地独法五十九条に基づけば、特段の辞令がない限り、今窓口で任期の定めのない常勤職員として窓口業務をやっていらっしゃる方が、そのまま横滑りで地方独立行政法人の職員になるということでよろしいかというふうに思うんですけれども、そうなった場合、先ほどの御答弁で、効率化の柔軟的な対応が可能だというもとで、また、今回の独立行政法人は、経費、事業年度ごとに業務の改善、効率化の目標を目指すわけですから、いわゆる職員の賃金が下がったりとか非正規化が進む可能性も否定はできないものだというふうに思います。
そうなってくると、本当に専門的で高度な戸籍業務が担保されるのかどうか、それが一つ大きな問題としてあるというふうに思いますし、また、そのまま移行して移ってしまうのではなくて、現に働いていらっしゃる方が、事前に聞きますと、二万八千六百九十五人、窓口関係では戸籍中心にいらっしゃると聞きましたので、やはりそういう人たちの働く環境が今後どうなっていくのか。
機械的には移行させない、しっかりと議論を、働く人たちの声を聞いていく、こういうことで、もし選択する場合も必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○安田政府参考人 お答えいたします。
窓口業務を行う地方独立行政法人には、市町村において、進行する人口減少、高齢化などの諸課題に対応するための政策の企画立案に集中的に人的資源を投入することができるように活用するということも想定されているわけでございまして、この場合には、移行するのではなくて、その方々は別の部署に移っていく、こういうケースもあるというふうに考えております。
もう一つ、どういう勤務条件になるのかということでございますが、地方独法になりますと、特定地方独法におきましては公務員法が適用になりますが、一部、適用除外の項目がございまして、勤務条件、給与等については基本的に労使交渉で決められるということになります。一般地独法でも当然そういうことでございまして、基本的に、勤務条件等についてはそういう形で、労使の話し合いの中で決まっていくもの、このようになるものと承知しているところでございます。
○梅村委員 非常に専門的で重要な業務をやっていらっしゃる方ですので、そういう方々の執務能力を高めるためにも、やはり待遇は下げてはいけないということを訴えたいというふうに思います。
最後に確認したいんですが、それでは、独立行政法人における個人情報の保護、国の方では法律がありますが、地方独立行政法人でどうなっているのか、また、情報開示請求はどのようにされるのか。調査によりますと、民間委託が進んでいない最大の要因が、個人情報が守れるかどうかというのを自治体の方が心配しているという調査だというふうに思いますので、この点を確認させていただきたいと思います。
○安田政府参考人 お答えいたします。
まず、地方独立行政法人は、市町村と同様でございますけれども、行政機関個人情報保護法の適用の対象外でございます。
具体的には、各地方公共団体については、それぞれ条例で定めるところによりまして個人情報の保護が図られておりまして、地方独法につきましても、そういう形で、ほぼ全ての地方独立行政法人について個人情報保護に関する規定が設けられているところでございます。
あわせて申し上げますと、地方独立行政法人の役職員には、地方公務員と同様の秘密保持義務が課されておりまして、こういう形でも担保されているところでございます。
○梅村委員 住民や自治体自身の不安が、こんな大事な業務をしっかりと住民の安心を守りながらできるのかという不安が大変大きいと思います。
安倍内閣の進める公的サービスの市場化のもとで、憲法に基づく地方自治、地方公共団体の福祉の増進の役割を後退させてはならないことを訴えて、質問を終わりたいと思います。
ー配布資料ー