日本共産党の梅村さえこ議員は30日の衆院総務委員会で、市町村が運営する国民健康保険の財政運営が都道府県に移管(来年4月)されれば、国保料(税)の大幅値上げにつながる危険性があるとして、「住民の命と健康にかかわる問題だ」とただしました。
移管後の国保税について、国の計算式に基づく埼玉県の試算では、年約13万~17万円へと2倍に引き上がる市町村も出ています。
梅村氏は、塩崎恭久厚生労働相がこの間、移管によって「保険料水準を抑制していく」と答弁してきたと指摘。同省の谷内繁審議官が試算には国の財政支援が反映されていないなどと弁明したのに対し、「負担増は起こらないと言えるのか」と追及しました。
谷内氏は「市町村の配慮で、みなさんが支払えるような水準になる」と答弁。梅村氏は「それには、各自治体が行う(国保料軽減のための)繰り入れを禁止しないことが不可欠だ」と述べました。
さいたま市に住む給与年収350万円の夫妻と子ども2人の世帯では、国保税が年38万円を超え、いまでも払えない実態を強調。とりわけ地方団体が解決を求める大きな矛盾が赤ちゃんとおとなが同額の3万円もの均等割で、「子育て支援に逆行している」と見直しを求めました。高市早苗総務相は「厚労省が財政支援を検討している」と述べました。
【「しんぶん赤旗」2017年5月31日付】
ー会議録ー
○梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。
きょうは、スタートまで一年を切った来年四月からの国保の広域化、都道府県単位化について質問いたします。
何が変わるのか、国保税額はどうなるのか、住民の皆さんの不安は大きく、頭を抱える自治体も少なくありません。それは、国保税を住民から集めるのはこれまでどおり市町村ですが、今後は国保財政の運営は都道府県となり、都道府県が市町村に納付金の額を提示して、市町村はその納付を求められると同時に、参考値として各市町村ごとの標準保険料率が示され、それに基づき国保税額を決めるという新しい仕組みになっていくからです。
その納付金、標準保険料率の試算が昨年秋からことしにかけ各都道府県で行われ、北海道、埼玉、三重、滋賀、大阪府などでは結果が公表もされましたが、私の地元の埼玉では大きな衝撃が走っています。
試算結果が資料一にあります。
埼玉ではこの間二回の試算が行われ、いずれも現行の国保税より大幅な値上げ、しかも、一回目より二回目にはさらに高額となりました。この資料の表のBのところ、つまり、保険税軽減適用後が現在の一人当たりの国保税額です。そして、Dの新制度一人当たりの保険税が広域化後の国保税額です。この差がつまり住民の皆さんにとっては引き上げの額となるわけです。
埼玉において、六十三市町村ありますが、多い順に少し御紹介しますと、小鹿野町が、現在一人当たり六万一千二百九円から十三万四千六百三十三円へと二二〇%の引き上げ。私が住んでおります蕨市ですが、七万一千五百八十九円から十四万一千八百六円へと一九八%の値上げ。お隣の戸田市も、八万七千百四十六円から十六万九千七百九十四円へと一九五%など、引き上げで二倍前後になっています。また、さいたま市や川口市なども一・四倍で、この表を見ていただいてもわかりますように、多くのところで値上げというふうになっているわけです。
埼玉以外も、例えば大阪府も、試算額のトップは豊能町で、現在の十三万六千八百九十一円から十五万九千八百一円になり、府全体の平均でも、十二万二千五百十六円から十三万二千六百八十七円への増加となる試算となっています。住民の皆さんお一人お一人にとっては大変大きな影響額になる可能性があります。
そこで、まず厚労省に確認しますが、そもそも国保の広域化は、こうした国保税の大幅な値上げを住民に強いていくものになっていくのかどうか。
塩崎大臣は、二〇一五年四月十七日の厚労委員会を初め、繰り返し、我が党の議員の質問に対し、国保の広域化は、国保の財政基盤を強化し、そして国保の保険料水準を抑制していくということで、国保料を納めやすい環境を整えていくというふうに考えていくと答弁されてきたと思います。
納めやすい環境を整えていくというふうに導入の際繰り返し御答弁されていたのに、こういう試算結果が出ているのを見ると、本当に大丈夫なのかという不安の声が上がっても当然だと思いますが、この点、答弁との関係でどういうふうにお考えでしょうか。
〔委員長退席、坂本(哲)委員長代理着席〕
○谷内政府参考人 お答えいたします。
平成三十年度に予定されております市町村国保の都道府県化でございますけれども、先ほど議員がおっしゃいましたように、都道府県が財政運営の責任を市町村とともにきちっと見る、さらに、市町村国保そのものは財政基盤が弱いということで、さらに公費を拡大して財政基盤を強化するために行ったものでございます。
先ほど議員がおっしゃいました、埼玉県の保険料についての試算結果の御紹介がございましたけれども、三十年度以降の市町村ごとの保険料水準のあり方につきましては、各都道府県が市町村と協議を進めた上で決定するものになっております。
御指摘の試算につきましては、保険料水準のあり方の検討に向けまして各都道府県が実施しているものでございますけれども、例えば、平成三十年度に新たに投入される千七百億円の財政支援の効果が反映されていないとか、さらには収納率も厳し目に見ている、そういったことでかなり厳し目に試算されておりますので、現段階では数字は未確定のものであって、幅を持って受けとめる必要があるというふうに考えております。
今後、各都道府県におきまして、試算結果も踏まえて市町村と十分に協議を行いまして、激変緩和措置も幾つか用意されておりますので、保険料水準の大きな変動が生じないような措置も講じつつ、地域の実情に応じて適切な保険料水準のあり方が決定されていくものだというふうに考えております。
○梅村委員 私は、塩崎大臣の国保料を納めやすい環境を整えていくために広域化するんだという答弁との関係で聞いているので、改めてここの点についてしっかり答えていただきたいと思いますし、各都道府県の試算についても、勝手にやっているわけじゃないと思うんですね。
昨年十月に、厚労省から各都道府県に対し事業費納付金標準保険料率簡易計算システムが送付をされ、昨年十一月末に第一回目、一月末に第二回目の試算が厚労省に提出されることになった。そういう経過もあり、各県は別に勝手に試算しているのではなくて、そういうシステムなんかも利用しながらやっているわけで、他人事みたいに試算を言うのは間違っているというふうに私は思います。
再度確認したいんですけれども、さっき、埼玉の場合は平成三十年から入る一千七百億円が入っていないというようなこともありました。そういうことも踏まえつつ、そういうのが入れば、そして、塩崎大臣の答弁にあるように国保料を納めやすい環境に整えていくということになりますと、今後、さまざまなそういう投入も含めてこの値上げというのは、住民から見たら納めやすいものに保たれていくのか、こんな負担増というのは起こりっこないというふうに厚労省として考えているのか、その点を御答弁いただきたいと思います。
〔坂本(哲)委員長代理退席、委員長着席〕
○谷内政府参考人 お答えいたします。
平成三十年の市町村国保の改革でございますけれども、まず、保険料につきましては、先ほど議員がおっしゃいましたように、都道府県が標準的な率を示した上で、それを参考にして市町村が各市町村ごとの保険料率を決めるということで、従来よりもきちっと見える化をした上で、例えば、医療費水準が多い場合はもう少し医療費の削減のインセンティブがきく、そういったことも期待できるのではないかという改革でございます。
今、議員がおっしゃいました、平成三十年度になれば本当に保険料はどうなるかという御質問でございますけれども、先ほどの繰り返しになりますけれども、平成三十年度に新たに投入される千七百億円の財政支援の効果は今後の保険料の計算の中にまた組み込まれてまいりますし、また、さまざまな激変緩和措置も用意されておりますので、そういったものを勘案しながら、今後、各都道府県が市町村とも協議して標準保険料率を決め、その上で各市町村が平成三十年度の実際の保険料率を決定していくものというふうに認識しております。
○梅村委員 そうしますと、今後、激変緩和策なども考えている、公費の投入も一千七百億円するということで、住民の皆さんには、塩崎大臣がおっしゃったように、納めやすい環境を整えていくという考えは維持されていくということでよろしいかどうかということだと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○谷内政府参考人 お答えいたします。
塩崎大臣からそういった答弁をさせていただいておりますけれども、当然、保険局といたしましても、平成三十年度からの保険料につきましては、そういった環境を整えてしっかりと皆さんに、国保につきまして、支払えるような水準に各市町村ごとにさまざまな配慮をしてなされるものだというふうに認識しておりますので、大臣のおっしゃったことになっていくというふうに我々としても確信しているところでございます。
○梅村委員 確認したいと思います。払えないような大幅な値上げというのは、本当に自治体財政も破壊しますし、地域経済も破壊していくし、何よりもその方々の命と健康にかかわる事態が今あると思いますので、しっかりその御答弁の趣旨を生かしていただいて、やっていただきたいというふうに思います。
それで、そういうことをしていくためにも、やはり低所得者の皆さんへの配慮を行っていくことがとりわけ大事だというふうに思います。この間の我が党の質問の中で既に確認しておりますように、これだけ試算しただけで、収納率もきつ目にやっているものだという話もあったんですけれども、やはり各自治体から現在行っている繰り入れは禁止しないということが必要不可欠な実態にも、試算に基づけばますますなってきているのではないかなというふうに思います。
そこで、次に、総務省に伺っていきたいと思います。
資料三のところにありますが、国保というのは、ほかの保険に比べて非常に低所得の方々が加入していらっしゃる、平均所得百四十四万円というふうになっています。それに対し保険料の負担率は九・九%ということで、一番高い負担率になっているということだと思います。
資料を一枚戻っていただいて二にありますように、例えば、埼玉県のさいたま市や川口市、三百五十万円の給与収入、四人家族、子供さん二人の場合は、国保税だけで、さいたま市が三十八万三千円、川口市が三十九万二千円。ほかの市の例も挙げていますけれども、ほぼ実収入の一割、合計所得にすると二割を超えた国保税の負担となっています。
この家庭の皆さんというのは、別に国保税だけを払っているわけじゃないんですね。特に大きいのが年金保険料だと思います。また値上げをされて、ことしでいうと、大人二人が払えば年間三十九万五千七百六十円が年金保険料で取られていく。そして、ほかの所得税、住民税を合わせて引くと、年二百五十万。このような保険料や税金がこの年収三百五十万円の四人家族を襲っていくということです。そうしますと、月にすると二十万に行くか行かない額で二人の子供さんの教育費や家賃や食費を賄っていらっしゃる。
これはすごく特異な例ではなくて、国保税の家族の皆さんというのは、こういうケースないしはもっと所得が低い方々で占められているわけですね。ですから、誰か一人が病気になったり職がなくなれば途端に立ち行かなくなる、そういう生活実態が広くあるのが国保税、国保をめぐる状況だと思います。
そこで、総務省に聞きたいと思いますが、先ほど、埼玉の上げ率というのは収納率を厳しく見た結果もあるというようなお話がありましたが、今度の国保の広域化では、収納率上位の自治体に交付金を加算する内容があり、市町村に徴収率を競わせ、差し押さえに追い立てられるようになるというような声も強く出ております。このような声に対し、総務省はどのように考えるか。
例えば、国税徴収法では、滞納処分の停止要件を、生活を著しく窮迫するおそれがあるときには、停止要件としてそういうことを決めています。決めているだけではなくて、その基礎となる金額を十万円、その他の親族一人につき四・五万円というふうに、基準も示しているというふうに思います。
先ほど御紹介したさいたま市の四人家族、二人子供がいる例なんかも、換算していくと、これと匹敵するような生活実態だと思いますが、広域化によって、しっかりとこういう皆さんの生活実態を踏まえた徴収になっていくのか、それとも、徴収率を競わせるようなことが起こっていかないようになるのか。その点、総務省に確認したいと思います。
○林崎政府参考人 お答えいたします。
今御紹介ありましたように、地方税法におきましては、滞納処分をすることによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができることとされておりまして、各地方団体におきまして、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で、適正な執行に努めていると考えているところでございます。
私ども総務省としても、この点につきまして、税務行政の運営に当たっての留意事項を示した通知におきまして、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めるようお示しをしているところでございまして、今後とも、関係法令や通知に沿って、適切に地方団体に対応いただけるよう助言をしてまいりたいと考えているところでございます。
○梅村委員 しっかりとそこら辺は広域化のもとでもやっていただきたいというふうに思いますし、現状でも、なかなか生活実態を見ていないんじゃないかというお声も上がっていますので、しっかりとお一人お一人のそういう生活や命を守るような、実態を見ていただきたいというふうに思います。
さて、さきのさいたま市の夫婦二人子供二人の四人家族の場合ですけれども、とりわけ高い国保税の大きな矛盾となっている、そして、地方団体が解決を求めているのが子供の均等割だと思います。住民税の均等割と違って、国保料、国保税の均等割は世帯員の一人一人にかかる。しかも、生まれたばかりの赤ちゃんも大人も同じ額となっているわけです。
例えば、さいたま市だと、子供一人に加算される均等割は三万六千六百円。子供が二人になると七万三千二百円。三人だと十万九千八百円。まさに均等割になっているわけですね、国保税のもとでは。やはり子育て支援、少子化対策にも甚だしい逆行になっていると思います。
今般、国保改革における国と地方の協議では、自治体の子供医療費助成に対する地単カットのペナルティーとあわせ、この子供の均等割の問題についても解決方向を探ることが合意をされていると思います。このうち、既に、医療費の助成をめぐっては、就学前児童の助成にかかわる部分については地単カットをやめることを厚労省が決めました。そこに至る上では、総務省がこの間粘り強く概算要求にこの要望を入れてきたということで、本当にこの努力には感謝申し上げたいというふうに思います。
そこで、総務大臣に伺いたいと思いますが、子供の均等割についても、こうした地方団体の要望を踏まえ、やはり赤ちゃんと大人がまるっきり同じ均等割で、生まれたばかり、すぐにこういう負担になるというのは少子化対策に非常に逆行すると思います。ぜひ、この見直しを強く提言されることをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○高市国務大臣 子供に係る均等割保険料の軽減措置の導入でございますが、現在、厚生労働省で、子供の多い保険者に着目した財政支援を実施する予定だというふうに伺っておりますので、結果的には、子供さんの多い方の保険料の伸びの抑制につながるということが期待できると思っております。
総務省から、平成三十年度から、都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体となる新制度に円滑に移行できますように、制度及び運用並びに財政支援の詳細について、地方と十分に協議を行っていただくように、厚生労働省に対して要請を行っております。
○梅村委員 最後の質問になります。
四月に財政諮問会議の民間議員から、国保の普通調整交付金の配分方法が、自治体の医療費適正化の努力に反し、モラルハザードを起こしているとの発言が出され、財務省の財政制度審議会からも、配分を各市町村の性別、年齢構成の違いを調整した標準医療費に基づくものに変えるという案が示されています。
年齢や性別の違いを補整しただけで自治体の医療費を単純比較し、低い方に合わせろというのは、余りにも乱暴で機械的な発想だと思います。
こうしたもとで、五月十七日、地方三団体は、財務、厚労、内閣府とともに、総務省にも、国保制度の抱える構造的問題を解消するためには、普通調整交付金が担う自治体間の所得調整機能は大変重要であり、見直しは容認できないと強く要望したと聞きます。当然、正論だと考えます。
三団体とともに、総務省としても断固反対の声を上げるべきだと考えますが、どのように考えますでしょうか。
○黒田政府参考人 お答えいたします。
先ほど大臣が御答弁させていただきましたように、基本的には、運用主体であります地方自治体の意見を十分に踏まえて対応していただくことが基本だと考えておりますので、私ども総務省としましては、その方針に沿って十分に検討させていただきたいと考えております。
○梅村委員 そのように力を尽くしていただきたいと思います。
重い国保税の負担は、消費を冷え込ませ、地域経済を疲弊させる一因ともなっています。広域化によって保険料の増加をしないことを強く求めて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
ー配布資料ー