NHK2016年度予算案が24日の衆院本会議で採決され、与党など賛成多数で可決しました。日本共産党は反対し、梅村さえこ議員が討論に立ちました。
梅村氏は、昨年の行政指導に続き、NHK予算への大臣意見で個別の番組名をあげ、対応を求めたことに対して「異例で重大」だと批判。「一つの番組のみ」でも放送法第4条の「政治的公平性」が確保されていると認められない場合があり、「電波停止」もありうるとの発言を続ける高市早苗総務相のもとで行われた重大性を指摘しました。
放送事業者の自主的・自律的な検証や、第3者のBPO(放送倫理番組向上機構)による改善こそ「言論と表現の自由を確保するルールだ」と強調しました。
梅村氏は、放送法への著しい不理解を示す籾委勝人NHK会長の発言に、視聴者・国民の不言は深刻だと指摘。
職員も含め不祥事が相次いでいることを批判し、全容解明と再発防止を求めました。
さらに16年度予算案で株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構に2億円の出資が予定されていることについて触れ、「受信料で成り立つNHKは、本来営利目的の活動はできない」と指摘。NHKが視聴者、国民の信頼を取り戻すため、政府から独立し、商業主義にくみしない公共放送としての基本的立場に立ち返ることを強く求めました。
【「しんぶん赤旗」2016年3月25日付】
ー会議録ー○梅村さえこ君 私は、日本共産党を代表して、NHK二〇一六年度予算の承認に反対する討論を行います。(拍手)
まず、NHK予算に対する総務大臣意見についてです。
大臣意見は、クローズアップ現代という個別の番組名を挙げ、昨年四月二十八日付で行われた総務大臣による行政指導を踏まえ、再発防止に向けた着実な取り組みを求めています。これは極めて異例であり、重大です。
事実に基づかない放送など番組内容に問題がある場合、まず、放送事業者の自主的、自律的な検証によって解決すべきです。さらに、NHKと民間放送連盟が設置をする放送倫理・番組向上機構、BPOが、第三者の立場から調査、検証して、再発防止策の提出と、その実効性を求めていくこと、これが言論と表現の自由を確保しつつ正確な放送と放送倫理の向上を図るルールです。
ところが、四月の大臣による行政指導は、放送事業者に対する事業免許の許可権限を背景にして、番組内容に介入したものと言わざるを得ません。これに続き、予算に対する大臣意見で、行政指導を踏まえた再発防止を繰り返し求めたのは、NHKの番組に対する露骨な介入であり、看過することはできません。
しかも、重大なことは、こうした大臣意見が、番組内容に対する介入発言を続ける高市大臣のもとで行われたことです。高市大臣は、一つの番組のみでも、放送法第四条の政治的公平性が確保されているとは認められない場合があり、電波法に基づく電波停止もあり得ると発言したのであります。
憲法第二十一条が保障する言論、表現の自由に基づき定められた放送法は、権力による放送への介入を防ぐことを目的としたものであり、第四条は、政治的公平性など、放送事業者がみずから守るべき倫理規範とすることを定めたものです。番組内容を政府が判断して放送事業者に介入することなど、断じて許されません。
次に、NHKの経営姿勢です。
NHKが、放送法に基づき、国家権力からの独立、放送における表現の自由を確保する姿勢を貫き、視聴者・国民の信頼が得られていることが必要です。
ところが、二年前に就任した籾井会長は、公共放送の会長としてふさわしくない発言を繰り返してきました。慰安婦問題、秘密保護法問題などの発言で、放送法に対する著しい不理解ぶりを露呈し、謝罪と弁明を繰り返してきたのであります。NHKの放送姿勢への視聴者・国民の不信は深刻なものとなり、会長の辞任、罷免を求める声は強まっております。
こうした籾井会長のもとで不祥事が相次いでいることを指摘しなければなりません。
会長自身によるハイヤーの私的利用問題に続き、NHK職員のタクシー券の私的利用、子会社における空出張、架空発注における着服、土地購入問題など、不祥事が繰り返されて後を絶ちません。徹底的な全容と原因の解明、視聴者・国民への情報公開と説明、そして再発防止が求められております。
さらに、二〇一六年度予算は、NHKが初めて株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構に二億円を出資する予定です。これは出資事業者の中で最高金額です。
この機構は、我が国の民間企業が海外において民間だけでは事業展開ができないような高いリスクのある事業への参入支援を目的としており、政府の成長戦略に位置づけられるものです。
受信料で成り立つNHKは、本来、営利目的の活動はできないはずです。公共放送の立脚点を崩すものであり、到底、視聴者・国民の理解は得られません。
最後に、NHKが視聴者・国民の信頼を取り戻すには、政府から独立し、商業主義にくみしないという公共放送としての基本的立場に立ち返ることです。このことを強く求めて、討論を終わります。(拍手)