梅村さえこ-日本共産党党中央委委員・子どもの権利委員会副責任者
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国の個人情報 利活用は人権侵害 梅村氏が改定案を批判 衆院総務委

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   日本共産党の梅村さえこ議員は19日の衆院総務委員会で、国や独立行政法人などが持つ個人情報を個人を特定できないよう「非識別加工」して民間が利活用できるようにする行政機関等個人情報保護法改定案について「国民の権利利益を侵すもの」と批判。梅村氏は、昨年の年金機構の個人情報流出事案の重大性にふれながら、法案の「利用ニーズ」とは何かと質問。総務省の上村行政管理局長は「産業界の要望と有識者から期待が述べられてきた。法案策定後に対象を限定する」と述べました。

 梅村氏は「成長戦略の一つとして個人情報の利活用を推進するもの」だと指摘し、経団連から利用イメージとして、不動産取得や賃貸利用に「地域ごとの世帯構成・年収等」を加工して提供することが示されていることなどを告発。国が持つ個人情報を民間に提供していくのは、大転換であり、世界でも例がないと批判しました。

 「個人を特定しないので国民の権利・利益の侵害は生じない。限定し安全に提供できる」という高市早苗総務相に対し、梅村氏は、安全というが技術の進歩で個人情報が復元可能となるかもしれないと批判しました。

                          【「しんぶん赤旗」2016年4月23日付】

 

ー会議録ー

梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。

 まず、熊本、大分を初め、九州の大震災で犠牲となられました皆様に心より哀悼の意を表しますとともに、私ども日本共産党も、力を合わせ、救援、復興に全力を挙げる決意をまず表明させていただきます。

 さて、質問に入らせていただきますが、今回、個人情報保護法を議論していくに当たって、まず、国の管理、取り扱いがそもそも適正に行われているか、これが重大な問題だと思います。

 昨年、不正アクセスが原因とはいえ、年金機構で百二十五万件の重大な個人情報流出事案が起こりました。まだ一年もたっておりません。全貌も明らかになっておりません。

 そこで、大臣にお伺いしますが、二〇一四年、二〇一五年に、個人情報に関する不適正管理、漏えいや不正流出が起こっている件数、その内容はどのようになっているのか、そして、そうした事案の中で、年金流出も含め、国民の不安の声をどう感じておられるのか、お答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、坂本(哲)委員長代理着席〕

高市国務大臣 二〇一四年、二〇一五年ということでしたが、二〇一五年については、ちょっとまだ数字を申し上げるのは難しゅうございます。

 二〇一四年、平成二十六年度の施行状況調査によりますと、行政機関及び独立行政法人等が保有する個人情報の漏えい等事案については、行政機関が五百三件、独立行政法人などが五百七十二件でございます。その多くは漏えいに係る個人の数が比較的少数であり、また、行政機関、独立行政法人等ともに、近年は漸減傾向にございます。

 発生形態につきましては、行政機関及び独立行政法人等ともに、誤送付、誤送信が件数の約二割を占めていて最も多く、次いで紛失が多くなっております。

 個人情報の取り扱いに当たりましては、行政の適正かつ円滑な運営を図りながら、個人の権利利益を保護するということが重要です。

 昨年の日本年金機構における大量流出事案が生じたことを踏まえまして、行政機関、独立行政法人などが保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する方針を改正しました。安全確保措置の徹底を各機関に要請してきておりまして、国民の皆様に安心していただける取り扱いになるように、引き続き努力を続けてまいります。

梅村委員 今御紹介いただきました数字、配付資料の一にもありますが、九百十六件。ネット上の流出は、九件から十七件ということで、ふえたりしてきております。

 今御答弁いただきましたように、こうした不安を取り除くこと、これが今、政府には求められているというふうに思います。にもかかわらず、今回の法案では、こうした行政機関が保有する情報について、非識別加工情報にして民間の事業者に提供する、とりわけ、本人の同意を得ることなく個人情報が第三者に提供されるというものであり、個人情報保護という点でリスクも生まれる、大変重大な内容であると思います。

 そこで、まず、非識別加工までして個人情報を提供する、どのようなニーズが民間事業者から出ているのか、お伺いしたいと思います。

上村政府参考人 近年の情報通信技術の進展によりまして、いわゆるビッグデータを活用していくことが可能になっております中で、特にパーソナルデータというものは利用価値が高いというふうになってございます。これを適正に、かつ効果的に利活用を進めていくことによりまして、新たな産業、それから活力ある経済社会、豊かな国民生活の実現に資していく、これは官民を通じた重要な課題だというふうに認識しております。

 このため、一昨年から総務省におきまして、有識者研究会、これは行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会でございますが、これを開催いたしまして、専門的な検討を行ってまいりました。

 研究会におきましては、産業界からヒアリングを実施するなどした上で最終報告を出させていただいておりますが、その中で、公的部門のパーソナルデータに対しても一般的な利活用の期待が存在する、それから、公的部門のデータの利活用の対象、範囲を適切に定め、提供時等における規律を課すことを前提として、匿名加工情報の仕組みを導入すべきであるという提言をいただいているところでございます。

 今回の法案は、このような産業界の要望、それから有識者の提言を背景として立案させていただいているものでございます。

 なお、本法案につきましては、非識別加工情報の作成のもととなる情報が、行政機関等が保有する個人情報である、こういう性質を考慮いたしまして、国民の不安を惹起しませんように、あくまでも個人の権利利益の保護を前提とした上で活用を図るため、有識者の提言も踏まえまして、まず、対象となる個人の情報の範囲を限定する、それから、提案者において適切な安全管理措置が講じられているかなどについて審査を行った上で、提供する仕組みというふうにしているところでございます。

梅村委員 今お伺いしたのは、具体的にどのようなニーズがあるのかということでしたので、ぜひ質問に沿ってお答えいただきたいなというふうに思います。

 しかも、今の御答弁では、産業界の要望と識者の中での検討ということで、一番情報が提供される主人公であるべき国民の意見がこの審議の中でどのように反映されているのか。やはり今の答弁を聞いただけでも、全く、産業界そして識者の中で生まれてきたものというふうに言わざるを得ないというふうに思います。

 今質問いたしました、具体的なニーズ、想定というのはいかがでしょうか。

上村政府参考人 本制度でございますけれども、この法案の成立をいただきましたならば、その後に、各行政機関等におきまして、提案募集の対象となる個人情報ファイルをまず特定いたしまして、それから募集をするということでございますので、現時点で、民間事業者等から具体的なデータ等の名称を挙げて要望をいただくということが困難であるということは御理解をいただければと思います。

 ただ、先ほど申し上げました有識者研究会におきます経済団体からのヒアリングにおきましては、非常に信頼性が高い基礎データでありますところの公共データ、これを民間で活用することについての期待は非常に高いということが述べられますとともに、行政機関等が保有いたしますパーソナルデータの適正な利用を促進するため、利用可能なパーソナルデータに関するデータカタログといったようなものを整備することについて要望は示されているところでございます。

梅村委員 もう少し具体的に御答弁いただきたいというふうに思います。

 そもそも、御紹介いただいている行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会の第二回報告の中でも、経団連からも具体的な御発言があるかというふうに思います。

 この中で、利用イメージとして、不動産取引の判断材料の多様化、適正化として、地域ごとの世帯構成や年収、大気汚染濃度、騒音測定値、犯罪情報などを企業が加工し、不動産取得時や賃貸に利用できるソフトを提供していく、それについての利用に使っていくというようなことも御発言であったようです。

 また、記憶に新しいと思いますけれども、二〇一三年には、JR東日本がSuicaの乗降履歴などを日立製作所に販売して、それが明るみに出ると苦情が殺到し、データ販売から除外してほしいという申請が実に六万を超えたという事例もあったかというふうに思います。

 このとき同社が販売したのは、利用者の生年月、性別、乗降駅、利用額、何時何分何秒に改札を通ったかというデータでした。これを日立が購入し、出店、広告計画などに使う予定だったということで、利用者の中では、自分たちが知らない間に自分の情報が売られていた、活用されていた、とても怖いという声がこのとき非常に起こったというふうに思います。

 また、ほかにも、市立図書館を運営する民間事業者が、市民の貸出履歴を自社及び提携企業内の情報システムに送信し、批判を受けたような事例もあるかというふうに思います。

 ですから、このような事例だとか、研究会のときにいろいろ経団連などから御発言があったような事例など、やはりニーズの一つにもなっていくんじゃないかなと想定するんですけれども、そのような認識でもよろしいでしょうか。

    〔坂本(哲)委員長代理退席、委員長着席〕

上村政府参考人 そのような御発言があったということは当然承知をしているわけでございますが、実際、今後、繰り返しになりますが、そうしたものが、今回、その後にこの法案を策定してお出ししておりますので、まず、加工対象となるデータ、個人情報ファイル簿でありますけれども、これは個人情報ファイル簿が作成、公表されているものに限定されるですとか、それから、情報公開請求があったとしたならば、全部不開示になるようなものは除かれるとか、いろいろ制限がかかっております。

 そうした中におきまして、そもそも、今おっしゃったようなデータみたいなものが対象となるかどうか、今ちょっと具体的には何とも判断がつきませんので、そのような回答とさせていただいたところでございます。

梅村委員 そのようなものになるかどうかという判断は、やはり国民の皆様お一人お一人で、どこに住んでいるのが漏れても嫌、どういう環境に住んでいるのが漏れても嫌、それを判断するのは、やはり国民の皆様お一人お一人にも問うていかなければいけないのが個人情報の問題だというふうにも思うわけなんですね。

 そういう意味でいうと、非常に大きなビッグデータを行政機関は抱えていらっしゃるというふうに思います。きょう、資料の二の方で、お配りさせていただいておりますけれども、実に国の行政機関が持っているデータの件数は六万五千弱、電算データは五万三千強、膨大なファイル簿が存在している。独立行政法人の持っているデータも、一万五千弱、うち電算データは六千弱。最も多いのは国税庁なんですね、電算データは五万二千弱。そして法務、農水と続いてまいります。国税庁は課税台帳、法務省は登記簿や矯正保護、外国人登録関係、農水省は生産者関係ファイルと言われております。また、百万人以上の個人ファイル簿、電算されているのも二百三十七ということで、このようなビッグデータに文字どおりなっていくわけです。

 やはり、こうした公的なものを、非識別加工するといっても、民間、第三者に提供していく、これは日本の個人情報保護の歴史の中でも大変大きな変更、大転換であるというふうに思います。公的なものを民間と共有していく、民間に提供していく、こうした転換ですから、私は、極めて慎重にこれは審議をしなければいけない法案であるというふうにも思います。

 そして、そもそも、こうした行政機関の個人情報は、権力的に集められてきているもの、行政にいろいろかかわろう、参加しようと思えば登録せざるを得ない、そういう中で集められてきたものだというふうに思いますけれども、そのように集められたというものでよろしいでしょうか。

上村政府参考人 お答えいたします。

 行政機関の保有する個人情報は、まさに多種多様でございます。いろいろな形態がございますし、その経緯もいろいろでございます。一つは、法令等に基づく申請、届け出、許認可、調査等によって収集される、こうしたカテゴリーがございます。また、行政機関がサービスの提供主体、それから契約の一方当事者として相手方の情報を保有しているものもございます。それから、各種相談の対応ですとか施設利用者等の情報を収集しているものなど、これはさまざまな契機により取得されているものだというふうに考えております。

梅村委員 さまざまと言いますけれども、行政のサービスを受けようとしたらそういうことを登録せざるを得ないという仕組みの中であり、それはやはり権力的に集められたものという定義になるというふうに思うんですね。

 そして、先ほどのSuicaの件ですけれども、除外してほしいという申請が六万件もあったと。では、今度、もし実施をされていくとなると、国民の皆さんからデータから除外してほしいというふうに言われれば、それは除外をすることができるのかどうか。そして、公的目的に応える公開はそもそもこれまででも行われてきたのではないかというふうに思うんですけれども、この二点についてお答えいただきたいと思います。

上村政府参考人 まず、後者の方からお答えを申し上げますと、公共的な利益のために、目的外にこれらの個人情報を提供するという仕組みはございます。ただ、これは個人情報そのものを提供するというものでございまして、しかも、その目的は非常に、学術、統計、その他特別な理由があるものということで限定をされています。極めて例外的な利用ということでございます。

 他方、今回の御提案申し上げております非識別加工情報でございますけれども、これは識別性をなくしたものということで、安全なものということになってございますので、そういう意味では、特別な理由がなくても広くお使いをいただけるという形にしているところでございます。

 それで、もう一つは、非識別加工情報は個人が識別できませんので、この情報が自分のものであるということはわからないという仕組みにはなってございます。ただ、この個人情報ファイル簿の、どの個人情報ファイル簿を使ってこうした非識別加工情報を作成したかということは記載をすることになってございますので、この点で苦情を申し出ていただくというようなことは可能な仕組みになってございます。

梅村委員 そうしますと、苦情を言った場合は除外をしていただける仕組みになるんですか。

上村政府参考人 仮に、加工の方法が十分でない、あるいは運用が十分でない、そういうふうなことがあった場合には、そのいろいろな状況に応じまして適切な対応をしていくことになろうと思います。

梅村委員 加工の状況が十分でないかあるかの以前に、使われたくない、民間に自分の情報を提供してほしくない、それは名前じゃないとしても、どこに住んでいるとか、どういう環境にいるのか、いろいろあると思います。病院のデータもあるでしょうし、いろいろ今回これだけのデータがあります。そういうときに、きちんとされているかどうかではなくて、そもそもそういう提供が嫌だということは、国民は拒否をすることはできるんですか。

上村政府参考人 繰り返しになりますが、非識別加工情報というのは、個人が特定できない、識別できないというものでございますので、そういう意味では、個々人の方々の権利利益を侵害するというおそれはないものと思っております。

 したがいまして、そういうことでございます。

梅村委員 しかし、その名簿が公表されたという事実は公表されるわけですよね。その中で、それが嫌だという国民の皆さんが生まれる可能性があるということはお認めになりますでしょうか。

上村政府参考人 そこは何度も申し上げますが、まず、加工の対象となる情報の限定、情報公開法の開示請求に当たるかどうかの判断、安全管理措置、それから従事者の義務、さまざまないろいろな措置を今回講じております。そうした安全管理措置、その他適切な加工、それから適切な取り扱いの規定を、これは昨年改正しました個人情報保護法をさらに上回る規定としているところでございます。

 こうしたものを通じて、御理解をいただいていくということだろうと思っております。

梅村委員 理解といっても、こうした法案がそもそも国民の中には知られていませんので、やはり全ての国民にかかわることですので、もっと慎重な審議が必要な法案だというふうに私は思います。

 今のにかかわってなんですけれども、データベース、電算化しているデータを提供するということだというふうに思います。しかし、ここで、前述したように、行政機関等が集めるデータについて、行政機関だからこそ出している個人情報が含まれているというふうに思います。

 財務省からは、多量の個人情報が含まれており、外部からの攻撃の対象となるリスク等が含まれており、ファイル名を従来より公表していないとも伺いました。ファイル簿となっていても、ファイル簿名さえ公表していないものもある。慎重に扱うべき情報が多くあると思います。

 この膨大な個人情報ファイル簿のうち、匿名加工情報の提供可能性のあるファイル簿は、どのような範囲で、どれぐらいあるのか、お答えいただきたいと思います。

上村政府参考人 お答えいたします。

 類型といたしましては、私が先ほどから申し上げているようなことでございまして、個々の個人情報ファイル簿、これがまず公表されているかどうかということ。それから、繰り返しになりますけれども、情報公開請求等があったならば、部分開示がされ得るものであるかどうか。それともう一つ、行政機関等に過大な負担が起きないかどうか。

 そういったことを勘案いたしまして、各省庁がこれを特定していく、法案の成立をいただきましたならばそういうことをしていくということになりますので、現時点ではどのぐらいの数になるかということは、ちょっとお答えするのは難しいと思います。

梅村委員 どのように活用されるのかというイメージも湧かない、現状では範囲も示されない。この点では、本当に国民の皆さんにとっては、これで自分たちの個人情報の権利利益が守れるのか、やはり全くわからないんですよね。このまま枠だけ決めて、あとはこれから決めていきますと。あれこれの法案ではなくて、全ての国民の皆さんの情報にかかわる、個人情報にかかわる問題ですから、やはりこのようなやり方は強引過ぎるのではないかなというふうに思います。

 時間が参りましたので、この点、最後に高市大臣にお伺いして、お願いいたしたいと思います。

高市国務大臣 近年、情報通信技術が進展しておりますので、ビッグデータの収集、分析が可能となっている中、特に利用価値が高いとされるパーソナルデータの利活用、これを適正かつ効果的に進めていくということは、これは新たな産業の創出や活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するものですから、官民を通じた重要な課題です。

 委員から、先ほど来、国民の皆様の特にプライバシーなどについての懸念、セキュリティーに対する懸念という問題提起をいただきましたが、パーソナルデータの利活用はあくまでも個人の権利利益の保護に支障を生じないということを前提に行う必要がございます。

 非識別加工情報ですが、特定の個人を識別できず、もとの個人情報を復元できないように個人情報を加工したもので、個人の権利利益を侵害するおそれは極めて低いものですけれども、作成のもととなる情報が行政機関が保有する個人情報であるという性質を考慮しましたので、本法案では、対象となる個人情報の範囲を限定し、また提案者において適切な安全管理措置が講じられるかといったことについてきちっと審査を行った上で、提供する仕組みにしております。

 あくまでも個人の権利利益の保護ということを前提に進めるということにいたしております。

梅村委員 個人の利益、権利の保護をあくまでも前提としてということでしたけれども、事前のレクチャーのときには、匿名加工しても、これからの技術発展の中で、この匿名がいろいろ明らかにされる技術が手にできるようになるかもしれない、五十年後、百年後にあるかもしれないというような御答弁もありました。しかし、そういうことを言っていれば、全くそのことがないわけではないわけで、やはりこういう中でこれを決めていくというのは非常に問題があるというふうにも思います。

 十分な徹底審議を求めまして、私の質問を終わりたいと思います。

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