日本共産党の梅村さえこ議員は26日の衆院総務委員会で待機児童問題をとりあげ、認可保育所の大幅増設と保育士の賃金引き上げを求めました。
梅村氏は、党埼玉県委員会が行った調査結果をしめし、同県内で保育所の入所申請の3割以上が不承諾となっている自治体もあると指摘。政府の緊急対策について「定員の基準の運用の弾力化」で対応するものだと批判しました。
梅村氏は「認可保育園を求める声や、長年の父母・保育士の運動に逆行する」と強調し、緊急対策に認可保育所の大幅増設や保育士の賃金改善が含まれていないと指摘。つめこみなど規制緩和中心の待機児童対策が行き詰まっているのであり、施策を認可保育所の大幅増設に切り替えるよう要求しました。厚労省の吉本明子大臣官房審議官は「ご指摘の通り、認可保育所をはじめとした受け皿を拡大させていくことが何より大事」だと述べました。
梅村氏は、埼玉県でも自治体から「公立を増やしたいが財源がない」との声があることや、市長会が「財政措置の拡充」を求め提言を出していると強調。全国で公立保育所が2005~14年の10年間で2446カ所も減少しているとして、一般財源化で廃止された国庫負担金の復活を求めました。
【「しんぶん赤旗」2016年4月30日付】
ー会議録ー
○梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。
本日は、保育園の待機児童問題と保育士の待遇問題について質問させていただきます。
事態は極めて深刻になっております。既に他の委員会でも、さまざまこの問題は議論をされております。
私も本委員会で昨年取り上げさせていただいたときに、既に昨年の段階でも、申込者の四割、五割が入所できない自治体がある、また二十九園も申し込んだが不承諾などの大変な実態から、非常事態だということで待機児童問題について質問させていただきました。
その際、高市大臣は、新制度のもとで総務省としても関係省庁と連携して取り組んでいきたいと答弁されておりますが、この一年、実際総務省としてはこの分野の対策をどのように進めてきたか、お願いしたいと思います。
○高市国務大臣 昨年四月から施行されました子ども・子育て支援新制度では、消費税財源を活用して、子ども・子育て支援の拡充が図られています。
この拡充分も含めまして、待機児童対策などの保育施策に係る地方負担について、平成二十八年度の地方財政計画に計上し、適切に地方財政措置を講じております。
さらに、平成二十八年一月発出の通知の中で、子ども・子育て支援新制度における量的拡充及び質の改善について地方交付税措置を講じることとしていること、当該措置については地方単独事業である公立施設分も含まれているものであることという旨を明記しまして、全国の自治体に情報提供を行っています。
また、厚生労働省におかれまして、本年三月二十八日に「待機児童解消に向けて緊急的に対応する施策について」を公表し、対策を打ち出されました。
ですから、総務省としましては、財政措置を中心に適切に対応しているということでございますけれども、引き続き、厚生労働省など関係省庁ともよく相談しながら、待機児童対策の課題には取り組んでまいります。
○梅村委員 また後で御質問させていただきますけれども、やはり、一般財源化したもとで、なかなかそれを保育園の方に使っていけていないという実情も、実際にはいまだあろうかというふうに思います。
それで、子育て新制度が出発するときにリーフレットなども出ておりますけれども、そこでは、全ての家庭の保育を支えていくということがありましたけれども、ことしの四月のお母さんたちの悲鳴に見られるように、新制度が始まったにもかかわらず、実際には待機がさらにふえているという事態、やはりこれは大変深刻になっていると感じております。
私の事務所等で、地元の埼玉県における保育所の入所内定者、未定者の数などを調査いたしました。六十三市町村中、四十をただいま集約した段階でありますけれども、四月一日の段階で不承諾数は五千八百九十五人でした。それだけの人が実に四月一日で不承諾になったということは、私も働きながら子育てをしてまいりましたけれども、どうやって職場復帰するのか、どうやって子育てするのか、本当に先行きが見えないという不安で、たくさんの父母の皆さんがいらっしゃることを思うと、本当に心が、胸が痛む事態だというふうに思います。
埼玉では、昨年の待機児童数は千九十七人でしたので、不承諾数と単純に比較はできませんけれども、それでも大変な数になっているというふうに思います。川口では三六・二、朝霞では三五・七、さいたま市では三〇・一と、三割、四割が不承諾。こういう自治体が大変たくさんあるという事態をぜひお伝えしたいと思います。
そもそも、児童福祉法二十四条一項では、市町村は、保護者から申し込みがあった場合は、それらの児童を保育所において保育しなければならないと定められているわけです。ですから、保育の実施義務は市町村にあり、本来、待機児童を一人でも生んでしまえば、それは法律が遵守されていないことになるのではないかというふうに思います。住民の福祉の増進を図る地方公共団体を管轄する総務省としては、私は、この問題、もっと積極的な、また、現状を認識して役割を発揮していただきたいなと思います。
その点で、三月二十八日に、安倍政権は、保育の待機児童について緊急対策を発表されていると思います。この対策を踏まえて、どのように総務省としては積極的な対策を打っていく予定なのかをお伺いしたいと思います。
○安田政府参考人 お答えいたします。
総務省といたしましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、財政措置を中心に適切に対応しているところでございます。引き続きまして、厚生労働省など関係省庁とよく相談しながら取り組んでいく必要があるというふうに考えております。
公立保育所については、交付税措置ということで一般財源化されておりますので、ここでしっかり財源を見ておりますし、また、私立の方についても、一定額の所要額を地財措置として計上しているところでございます。
○梅村委員 それは基本的な対策だと思うんですけれども、今回、緊急提言との関係では、何か総務省としては財政措置などは新たに考えているんでしょうか。
○安田政府参考人 お答えいたします。
今回の提言を受けまして、厚生労働省さんの方と事務的にお話はさせていただいてございますが、現段階でまだ具体的なものがあるわけではございません。
○梅村委員 また後ほど述べますけれども、やはり自治体からは財政措置を大変強く求められていると思いますので、ぜひ検討していただきたいというふうに思います。
そこで、少し戻るんですけれども、緊急対策そのものについて伺いたいと思います。
今回、緊急対策で、今までよりもより進んだ点というのはどういう点なのか、それについて簡潔にお答えいただきたいと思います。
○吉本政府参考人 お答え申し上げます。
三月二十八日に、今お話のございました緊急対策をまとめさせていただきました。これは、お子様を預けたくても保育の受け皿がないという実態に鑑みまして、早急に対応したいということで、質の確保を図りつつ量の拡大を図る、短期間で実効性のあるものを取りまとめたということでございます。
中身といたしましては、多岐にわたっております。
既存の基準の運用の弾力化、それによりまして、国の基準を上回る基準によってお子さんを保育されているような自治体にさらなる受け入れの可能性がないかどうかといったことを御要望することもあります。
また、特に都市部におきましては、保育所整備のための用地でありますとか建物でありますとか、そうしたことがなかなか確保できないということがございますので、そうした物件の賃貸、あるいはそれに対する改修等に関する補助の支援の率を厚くするといったような内容を盛り込んでいるところでございます。
○梅村委員 さまざま積極的に使えるものもあるかとも思うんですけれども、ただ、中心的には、今さらりと御説明いただきましたけれども、弾力化、基準を上回るということでいえば、例えば、小規模保育所の定員上限を十九人から二十二人にするという問題。
そもそも、十九人の小規模化ということもいろいろな議論があったと思うんですけれども、二十二人にして果たして小規模化、小規模保育と言えるのか、やはり詰め込みになってしまうのではないかというようなお声がお母さんたちの中からたくさんあります。
また、そもそも、よりよい保育環境の中で成長させていきたいということで、長年の父母や保育士たちの運動の中で、それぞれの地域で基準を独自に設けてきたのを、今回の待機児童問題の対策で、施設をつくらずして長年の運動を逆に後退させるようにして、そこにもっと入れなさい、基準を国基準に下げなさいというのは、非常に父母の皆さんにとっては、やはり安心した保育園を拡充してほしい、認可保育園をつくってほしいという声からは、私は、逆行する事態なのではないか。そこに皆さん危惧を抱いていらっしゃいますけれども、その点はいかがでしょうか。
○吉本政府参考人 各自治体におかれまして、保育の施設、また量の確保については、さまざま工夫され、努力されているというふうに承知をしております。
その中にあって、繰り返しになりますが、この四月一日からの保育に困っておられる方々のために緊急的にとれる対応ということで、あくまで国の定めている基準を揺るがすものではございませんが、それを上回る範囲での弾力化。
先ほどの小規模保育につきましても、同様に基準を揺るがすものではありません。その基準を確保した上での定員の弾力化ということでお願いをしているところでございます。
○梅村委員 私、先日、「ママ・パパ・保育士国会へ!有志」という院内集会に参加をさせていただきました。保育所で子供を亡くされたお母さんが実際参加をしていて、また、最近も保育所での死亡事故が相次いでいるかというふうにも思います。
やはり本当に安心、安全なところでおなかを痛めて産んだ我が子を預けたい、それは当たり前の願いだと思います。ですから、緊急的にやる場合はあるかもしれませんが、ただ、今、詰め込みだけで、大幅増設していくという対策がやはりないというところが問題なのではないかなというふうに思っているところです。
私たち日本共産党は、四月五日に待機児童問題の解決に向けた緊急保育提言を発表させていただき、三十万人分の認可保育所の増設、月十万円の保育士の賃上げなど労働条件の改善という大きな二本柱で、根本的な対策を緊急に行う提起をさせていただきました。
そこで、伺います。
やはり、緊急な対策はもちろん必要かもしれませんけれども、長い間、規制緩和で詰め込みの保育、待機児童対策をしてきたために、今、そのしわ寄せが今のお母さんや子供たちに来ているわけですね。待機児童問題というのは十年以上にわたって、私もそうでしたけれども、預けたくても預けられないという状況で、長年お母さんたちは声を上げ続けているわけです。ここまで来たら、やはり詰め込みではなくて、しっかりと、ふさわしい認可保育園を大量につくっていく、子供たちの未来のためには、国が責任を持ってここに踏み出すべきではないかなというふうに私は思っております。
認可保育園を大幅に増設していくこと、また保育士の賃上げを行っていくこと、保育士については政府の緊急対策にも今回入っていないわけですけれども、この二点について、いかがお考えでしょうか。
○吉本政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、保育所や認可保育所を初めとした受け皿を拡大させていくということが何よりも大事なことだというふうに考えております。
御案内のとおりだと思いますけれども、国におきましても、待機児童解消加速化プランに基づきまして、二十五年度以降、当初は四十万人という目標でやっておりましたところを、今回五十万人まで上積みを予定いたしまして、その整備の加速化を図るということにしているところでございます。
これまでも加速化プランで掲げました目標を上回る形で整備を進めてきているところでございまして、引き続き、自治体の取り組みをさらに支援して、整備を加速させていきたいというふうに考えております。
○梅村委員 いろいろな施策はあると思いますけれども、ただ、新制度のもとでは、認可保育園を大幅につくっていくというよりは、やはり小規模保育を中心とした施策にとどまってきている。にもかかわらず、十九人を今度二十二人にしていく。やはりこの間のこういう施策について、非常に不安に思っているお母さんたちがたくさんいらっしゃるということだというふうに思うわけなんですね。
一九七〇年代には、十年間で八千カ所の認可保育所を建設してきております。私たちが今回提案している三十万人分、約三千カ所の認可保育所を緊急に増設することは、例えば、政党助成金の廃止だとか無駄な公共事業の無駄遣いや、これまでで最高の五兆円の軍事費の一部などを削減して、やはり国がその気になればというか、私は、子供たちのために、このお金はどこかから捻出をして、しっかりと、緊急に、安全な保育所の整備に足を踏み出さなければいけないというふうに思っているところです。
そういう点でいうと、認可保育園の中でも、やはり国、自治体が先頭になってできる施策としては、公立保育所、縮減の流れになってきているんですけれども、こういう待機児童をめぐる状況の中で、公立保育所をふやしていく、こういうふうに転換していくときではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○吉本政府参考人 保育の受け皿の確保につきましては、各自治体におかれまして、その地域の実情に応じて、公立保育所、私立の保育所、また、今回の新制度で新たにできましたさまざまな多様な保育、それらを組み合わせて対応するべきものだというふうに考えております。
○梅村委員 地域の実情に応じてということをいつも言われるわけですけれども、私たち、今回いろいろな調査をさせていただいたときに、自治体レベルで見ても、お母さんや保育士さんからやはり拡充の要望が出ているわけで、埼玉県内の調査でも、幾つかの自治体で、認可保育園、本当は公立をふやしたいんだけれども財源がない、財源ができるよう要望していきたいというふうな回答もいただいているところです。
市長会からも、保育所待機解消のために、地域の実情を十分に踏まえとしながらも、財政措置の拡充を図るなど必要な措置をという提言が、昨年十二月にも出されているかというふうに思います。
ですから、自治体が地域の皆さんの実情に合わせた施策をすればいいと言っているんですけれども、そういう財政的にできないという状況があるわけで、国庫負担金の一般財源化など、廃止したということも大変大きくあったかと思いますけれども、そこら辺の抜本的な対策が必要ではないでしょうか。
○吉本政府参考人 私ども、先ほど申しましたように、加速化プランに基づきまして、各自治体が把握されているニーズ、それをきちんと確保できるような予算的な補助については、予算上も確保して進めているところでございます。
○梅村委員 公立保育所は、二〇〇五年には一万二千九十カ所あったのが二〇一四年には九千六百四十四カ所、この十年間で二千四百四十六カ所も減少してきております。これについては、やはり皆さんが、二〇〇四年に運営費、二〇〇六年に施設整備費の国庫負担金を一般財源化したということを強く挙げられております。
私たちはこの復活を提案しておりますけれども、この点はいかがでしょうか。
○安田政府参考人 お答えいたします。
公立保育所に係ります施設整備費及び運営費につきましては、三位一体改革による税源移譲にあわせまして、地方公共団体がみずからその責任に基づき設置しているということに鑑みまして一般財源化されているわけでございますけれども、一般財源化による影響が生じないよう、適切に地方財政措置を講じているところでございます。
施設整備費につきましては、一般財源化に係る地方債や社会福祉施設整備事業債の対象としているわけでございます。具体的には、従来の国庫補助金の補助率が二分の一であったことに鑑みまして、事業費のうち五〇%を一般財源化に係る地方債の対象といたしまして、その元利償還金について、事業費補正により七〇%、単位費用により三〇%、合わせて一〇〇%を地方交付税で措置しております。残り五〇%につきましては、その八〇%を社会福祉施設整備事業債の対象としているところでございます。
また、運営費につきましては、地方交付税の算定に当たりまして、地方負担の全額につきまして基準財政需要額に適切に措置されるよう補正を行っているところでございます。
その上で、保育の供給体制整備につきましては、各市町村において、民間の事業者を活用するか、みずから直接運営するか等を含めて、それぞれの地域の実情等を踏まえて判断がなされるものというふうに考えている次第でございます。
○梅村委員 時間が来ましたので終わりますが、やはり安心して預けられる認可保育園の大幅増設というものが基本だという御答弁は先ほどいただいたというふうに思います。
子どもの権利条約には、子供には発達、成長する権利があることを強くうたっております。それを保障する責任が国にはあると私は思います。子供たちを詰め込むのではなく、認可保育園の大幅増設を最後に重ねて強く求めて、質問を終わりたいと思います。