日本共産党の梅村さえこ議員は15日の衆院総務委員会で、TPP(環太平洋連携協定)にかかわる郵政事業の規定についてただし、TPPが発効すれば郵政におけるユニバーサルサービス、国民の安心は守れないと批判しました。
梅村氏は、日米が並行交渉で、日本郵政の販売網へのアクセスやかんぽ生命に対する規制上の監督の取り扱いなどで「認識の一致を得た」とされたと説明されていることにふれ、内容を明らかにするように求めました。金融庁の西田直樹総務企画局審議官は「日本郵政が新たな義務を負う性質のもとではないと理解している」と答弁しました。
梅村氏は「日本政府がそう思っていたとしても、米政府がそう受け取っているかどうかは別問題だ」として、日米が交わした文書で日本政府が米国政府の要請にこたえ連絡先を利用可能とするとされている点や、かんぽ生命が競争条件で有利とならないように記されていることを指摘。米通商代表部の「二〇一六年外国貿易障壁報告書」で「対等な平等条件が確保されるまで日本郵政金融2社の業務範囲の拡大を認めないよう求め続ける」とあることを紹介し、「こうした中でのTPP交渉だ」とただしました。
高市早苗総務相は「公正公平な環境の中でしっかりと競争できる」と述べたのに対して、梅村氏は、多国籍企業の横暴で格差と貧困が広がる中で「経済の主権をつくり、雇用を守れ」の流れが広がっているとして、TPPからの撤退を強く求めました。
【「しんぶん赤旗」2016年11月15日付】
ー会議録ー
○梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。
引き続き、TPPと郵政問題について質問いたします。大変申しわけありません、時間の関係で、少し質問の順序などを入れかえさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
先ほど田村議員から具体的な質問がありましたので、私は、条文や各文書などに基づいて、TPPと郵政問題について伺いたいと思います。
まず、TPP協定の仮訳文と同時に国民向け文書として出されたTPP交渉参加国との交換文書一覧、これは配付資料一にあるとおりですけれども、これを見ると、保険等非関税措置に関する日本と米国との並行交渉について、認識の一致を見たとあります。この認識の一致とは、どういう一致なのかということを御答弁いただきたいと思います。
○飯田政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の文書におきましては、保険分野について幾つかのことが記載されております。保険分野については、日本郵政の販売網へのアクセスに関して、民間の保険サービスの提供者に対し、透明性のある競争的な方法でアクセスを与えることの重要性。それから、日本政府が行う規制上の監督、取り扱いに関しまして、同種の保険サービスを提供するいかなる民間の保険サービス提供者よりもかんぽ生命による保険サービスの提供について有利となるような競争条件を生じさせるいかなる措置も採用し、または維持しないこと。それから第三といたしまして、透明性に関しまして、かんぽ生命が、他の民間の保険サービス提供者によって発行される財務諸表と同程度の透明性をもって財務諸表等を公表することを確保することとしております。
以上が内容でございますが、日米並行交渉の保険分野の交渉においては、かんぽ生命における我が国の保険の販売に関し、我が国として既存の国内法令を適切に実施していくことを確認するなどの内容を文書に盛り込むということにより、日米双方に、認識が一致して、受け入れ可能な形でまとめられたものと承知しておるところでございます。
○梅村委員 今御紹介がありましたように、この文書では、1日本郵政の販売網へのアクセス、2かんぽ生命に対する規制上の監督及び取り扱い、そして、3かんぽ生命の透明性についてとる措置等についての認識の一致を得たというような説明があります。
引き続き、さらに聞きたいと思いますけれども、1の日本郵政の販売網へのアクセスについて、もう少し具体的に説明をお願いしたいと思います。
○西田政府参考人 お答えいたします。
御指摘の箇所は、他の保険会社による郵便局を含む日本郵政の販売網への自由なアクセスを妨げないという日本政府のこれまでの姿勢を確認したものでございまして、日本郵政が新たな義務を負う性質のものではないというふうに理解しております。
○梅村委員 ただ、それに対して日本政府がどういうふうにかかわっていくかということも、私はこのTPP交渉の中では重大な問題だというふうに思います。
例えば、TPP協定参加国との間で作成した文書、日米間で交わされた保険等の非関税措置に関する書簡では、日本政府は、日本郵政がその販売網へのアクセスを提供する際の手続及び原則に関する情報提供をするために、アメリカ合衆国政府の要請に応じ、同政府のための連絡先を利用可能とするというような、大変事細かなことまで条件が確認されているというふうに思います。
これは、日本郵政の独自の判断というところにとどまるのではなくて、日本政府が、やはりそういう連絡先まで利用可能とする、提供すると踏み込んでTPPでは言っているのではないかというふうに考えるところです。
この点はいかがでしょうか。
○飯田政府参考人 今御指摘いただいたことに関しましては、日本政府がその情報提供に努めるということを示したものでございまして、あくまでも国内法と整合的な対応をして運用していくということとの関係で、その情報提供をアメリカ側にするということを記載したものというふうに理解をしております。
○梅村委員 やはり、日本政府が乗り出してやっているということがここでは明らかになってきているのではないかなというふうに思います。
それで、さらにその交渉の具体的内容について、先ほど内閣府が出した文書だけではなかなかわかりませんが、いわゆるサイドレターというものが、私の資料の二ページ、三ページ目にあります。そこに、各項目についてどういうやりとりがされたのか。
これは、佐々江アメリカ大使が米国の通商代表に出した書簡であります。ここを見ていくと、まず冒頭に、日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、TPP交渉と並行して行ってきた複数の鍵となる非関税措置について成功裏に並行交渉を妥結したことをここに確信することを喜ばしく思うというふうに述べております。そして、妥結した内容については、二ページ目から三ページ目について、かなりかんぽ生命についても具体的な内容が書かれているかと思います。
きょうは時間の関係上、一つに絞って聞かせていただきたいと思うんです。
例えば、三枚目の三の「規制上の監督及び取扱い」、この中の(a)に線が引っ張ってありますけれども、日本政府は、TPPの協定の中の規定に従い、同種の保険サービスを提供する民間のサービス提供者よりもかんぽ生命保険による保険サービスの提供について有利となるような競争条件を生じさせるいかなる措置も採用せず、または維持しないという文言があるわけですよね。
ここで想定されるいわゆるかんぽが有利となる条件というのはどういう条件なのか、これは簡潔に伺いたいと思います。全部を説明していただくのではなくて、かんぽが有利となる条件とはどういう条件なのかということについて簡潔にお答えください。
○西田政府参考人 お答えいたします。
議員御指摘のこの書簡は、日本政府が行う規制上の監督及び取り扱いに関して、かんぽ生命がほかの金融機関よりも有利となるような競争条件を生じさせるいかなる措置も採用しない、または維持しないということについて、日本として既存の国内法を適切に実施していくといったことを確認したものでございます。
したがって、記載されている事項というのは現行制度によるものでありまして、今後も維持していく制度について確認したものでございますので、かんぽ生命に特段の影響を与えるものではないと思っています。
いずれにしても、金融庁といたしましては、保険業法、郵政民営化法に基づいて適切に運用してまいりたいと考えております。
○梅村委員 今の御答弁で、適切に国内法に基づいて実施していくという御答弁だったというふうに思いますけれども、たとえ日本政府はそういうふうに思っていたとしても、ではアメリカ政府がそういうふうに受け取っているかというのはまた別問題なのではないかなというふうに、こういう文書を見て非常に強く思うことなんです。
例えば、この有利となる条件を採用しないということは、今田村議員が言ったようなアフラックのがん保険の販売、こういうものもさらに広げようとすることにもつながりかねないものなのではないかなというふうに思います。
麻生財務大臣は、昨日、参院の特別委員会で、こうした問題について、国内とか外資に関係なく、適正な競争が行われて国民サービスが向上していくというふうに答弁されています。今の答弁もそういう趣旨だというふうに思いますけれども、こういうような、競争条件を生じさせるいかなる措置も採用せず、または維持しないという文言、これは、日本はそういう影響はないというふうに思っているかもしれませんが、この後四枚目の資料で、障壁報告書、アメリカがどんなふうに日本に対して要望しているかという文書を見ていきますけれども、やはりアメリカ自身はそういうふうには思っていないのではないかなというふうに感じるところです。
その最後の資料、外務省がことし五月に明らかにした二〇一六年の外国貿易障壁報告書、これも長いものですから線を幾つか引っ張ってあります。
事前のレクチャーでは、TPPになっても郵政問題については特段変更はない、影響はないという御意見をこの間いただいているところですけれども、この文書を見ても、まず、概観のところも、TPPの協定下ということがしっかりとうたわれ、そして、不当に米国輸出品を阻止する非関税障壁に対処をしていく、そして、米国企業にとって公平な競争の場をつくっていくと。やはりアメリカにとってみれば、このTPPというのは米国企業にとって公平な競争の場をつくっていくということをしっかりと述べているわけですね。
そして次に、日本郵政、保険についてもどのようなことが書かれているか。今までとは変わらないよということを何度もレクチャーの中で伺ってきましたけれども、あらゆる必要な措置をとるための取り組みを注意深く注視し続けるとか、義務を履行することとなるとか、コミットしたとか、そういうことが幾つもこの文書の中では書いてあります。
そしてさらに、先ほどのアフラックのがん保険の商品を取り扱う問題については、殊さらこの文書の中に、二〇一五年七月までに千局から二万局以上にふえたことなど大きな進展があったということで、これはどう見ても、アメリカからとっても政府から見ても、非常に歓迎している、評価している。そして、最後の二行に、対等な競争条件が確保されるまで日本郵政金融二社の業務範囲の拡大を認めないよう日本に求め続けるという、ここまでいろいろ日本郵政、かんぽ生命について露骨な要求、要望がされている。
こうした中でのTPP交渉だということも、しっかりこの委員会では本来審議がされるべきだというふうに私は思っております。
それで、今回のアメリカの大統領選挙の結果もあるわけです。そして、これまでのアメリカの要求に応じてきた流れからすると、安倍内閣の姿勢は余りにも批准ありきで前のめりになっているのではないか。私は、もっとこの郵政の問題を、TPPとの関係でもしっかりと国会審議をすべきだ、やはり、日本の国民のユニバーサル問題をどうしていくのか、そういう問題にもかかわってくる、日本の国民の財産、そういう問題だというふうにも思います。
ですので、余りにも前のめり、しっかりとTPPと郵政問題を審議すべきだというふうに思いますけれども、高市大臣の見解を伺いたいと思います。
○高市国務大臣 委員が資料を配付していただきまして、先ほど配付資料三というものを私も一緒に読ませていただきました。
米国企業にとって公平な競争の場をつくりと書いてあるということを問題視されていますけれども、これはUSTRが公表したものですから、当然こういう書きぶりになると思います。
日本は、TPPの交渉においても、日本の企業にとって海外でやはり市場が広がっていく、そして、守られた公正な公平な環境の中でしっかりと競争ができる、そういうしっかりしたルールに基づいた自由貿易、秩序の上に立った自由貿易というものを考えながら、日本の国益を最大化するために交渉を続けてきたものだと思っております。
今回も、当然、郵政事業は国民生活に深くかかわるサービスでございますから、国民に十分な情報提供を行うということは当然必要です。
ですから、郵政事業に関するものも含めて、TPP協定の規定については全て公開されています。委員も御承知のとおりではありますが、内閣官房TPP対策本部のホームページで、協定本文や概要、サイドレターなども公開されています。
その上で申し上げたら、TPPにおける郵政事業に関係するルールというのは、全て現行の法制度に抵触はいたしません。
TPPが現在日本郵政グループ各社の行っている業務に対して支障を与えることはないと考えております。
ただ、国民の皆さんに十分な情報提供を行うということは重要ですから、情報公開もしておりますし、この委員会でもどうぞお取り上げいただいて結構かと思います。
○梅村委員 今、公正と公平なルールということがありましたけれども、アメリカでも二人の大統領候補がTPP反対を掲げざるを得なくなったのは、余りにも多国籍企業の横暴で格差と貧困が広がる、そういう新自由主義の全体の中で、やはり経済自主権を各国にしっかりとつくり、国内の雇用を守っていく、そういう要望の中で出てきた流れだというふうにも思います。
私たちは、TPPを推進しさらに民営化を加速させるような方向では、郵政におけるユニバーサル、国民の安心、安全はかち取れないと考えます。多国籍企業のためのTPP協定から撤退し、国民のための郵政の発展に進むことを強く求めて、質問を終わります。
ありがとうございました。