コロナ禍のもとでの米価下落は、米の収穫量が埼玉県一の加須市の農家にも深刻な影響を与えています。「このままでは来年の米を作れない。緊急に対策をしてほしい」と農家が立ちあがり、市は支援に踏み出しました。
同市が始めた支援は、米価下落の影響を受けた農家に、次期の水稲作付けに対する種苗費相当額(10アール=1000平方メートルあたり3500円)を交付するもの。対象は2021年度の経営耕地面積が30アール以上、JAほくさいに営農計画書を提出済の農家で、対象者には市から申請書類を郵送しています。
支援の対象となるのは約3000の農家です。同市で米や麦を生産する農家で、埼玉県農民運動連合会(埼玉農民連)会員の男性は「もうお金は借りられない。周りの農家からは『もうやめる』との声も聞こえていた」と話します。
農家の苦しい状況を何とかしようと、埼玉農民連東部センター(小山欽次会長)は9月市議会に、「国に米価下落対策を緊急に求める意見書を提出してほしい」とした請願を提出。共産党などが採択を求めたものの、自民系や公明党の議員が意見書提出に反対し、請願は趣旨採択となりました。
しかし、請願提出で農家の苦境を知った市は農家支援へと動き出し、市議会最終日に支援を盛り込んだ補正予算案が提出され、全会一致で可決されました。
請願を審査した産業建設委員会では、自身も米農家である自民系の委員長が「大して手を打っていない農家も悪い」と発言し、農家の願いに背を向けました。埼玉農民連東部センターの小山会長は「怒りを通り越して情けない。小手先の対策の話じゃなく、根本的な解決法を議論するのが議員の仕事」「すぐに市が支援を決めたのはすごい。危機感を持ってくれた市の職員の方には感謝したい」と語りました。
共産党の小坂徳蔵市議団長は「農家が声をあげ、市政を動かした。行田市や羽生市、久喜市なども同じような支援を決め、近隣にも影響を与えている」と指摘します。
11月の総選挙で、加須市を含む衆院埼玉12区では、野党統一候補の森田俊和氏(立憲民主党)が、同市が地元の自民党候補に競り勝ちました。埼玉農民連の松本慎一副会長は「自民党候補は加須市で票を伸ばしたが、森田さんはそれ以上に伸ばした。多くの農家は、『自分たちの声を反映してくれない』と自民党農政に怒っている」と言います。
この間、軽トラパレードや農家訪問で声を聞いてきた、共産党の梅村さえこ参院埼玉選挙区候補は「加須市の支援は画期的です。一方で、米の過剰在庫を国が買い取り生活困窮者などに供給することや、77万トンものミニマムアクセス米の輸入中止など国がやるべきことが多くあります。参院選では、農業を国の基幹産業として守る共産党の議席を必ず勝ち取りたい」と決意を語っています。